【西嶋研究室】 traverse 25 Project

棟(むね)瓦(がわら)のある和瓦屋根に設置した太陽光発電パネルに働く風力

博士後期課程 村上 剛

はじめに

脱炭素社会実現に向けて太陽光発電パネルを住宅屋根に設置した太陽光発電システムの導入が推進されている。パネルを屋根に設置するための架台の設計において,パネルに働く風力はJIS C8955[1](以下架台JISと呼ぶ)によって算出方法が定められている。住宅の屋根葺(やねぶき)材には、和瓦や金属・スレートなどが一般的に用いられているが、架台JISにおいて屋根葺材の種別は考慮されていない。さらに和瓦屋根に注目すると、和瓦屋根に設置したパネルまわりの風力に関する設計情報はほとんどない。そこで本研究では棟(むね)瓦(がわら)を有する和瓦屋根を再現した住宅模型および金属・スレート屋根を模した住宅模型を用いた風洞実験を実施し[2]、両者の風力係数の分布を比較することにより棟瓦の有無がパネルに働く風力に与える影響を検討した。

 

風洞実験

 実験には図1に示す切妻屋根を有する二種類の住宅模型を使用した。模型Aでは棟瓦を有する和瓦屋根を再現し、模型Bでは金属・スレート屋根を想定した平坦屋根を模している。また、模型の屋根勾配はいずれも和瓦切妻屋根で標準的な傾き4.5寸(傾斜角 24.2度)としている。風洞気流としては乱流格子を用いた地表面粗度区分II相当の気流を作成し、パネル上下面に作用する風圧を測定した。ただし、パネル下面に作用する風圧は屋根上面に作用する風圧と等しいものとして、屋根上面の圧力測定点で測定した風圧で代用している。解析では、はじめに、パネル上下面で測定された風圧を屋根平均高さにおける平均速度圧で基準化し風圧係数を求めた。パネルに働く風力はパネル上下面に働く風圧の差に相当するため、次にパネル上下面の風圧係数の差分を取ることで風力係数を算出した。

*「地表面粗度区分」は地形・地物による地表面の粗さに基づく地域の区分(I~V)を表し、粗い(Vに近い)ほど都市化が進んでいる。
ここで登場した「地表面粗度区分II」は田園地帯や草原のような障害物が散在するような地域を指す。

図1. 風洞実験模型の屋根形状(上)と模型写真(下) 縮尺1/30: 屋根勾配 24.2度([2]より転載・一部変更)

 

図2. モジュールR4に強い風力が作用する瞬間の風圧係数および風力係数の分布(風向角105)([2]より転載・一部変更)

 

モジュールを設置する架台強度の最適設計に向けて

屋根にモジュールを設置する架台の強度は、架台JISを用いる場合、全風向角において最も強い風力が、すべてのモジュールに働くものとして設計する。また、架台JISを用いて強度を算定した架台は、屋根葺材の種類に関わらず安全であることが確認されている。そのため、屋根葺材の種類によってはパネルに作用する風力が低減され、架台JISで算定した強度が過大評価になる可能性がある。現に、ここでは紹介していない実験結果において、平坦屋根の方が和瓦屋根よりも強い風力が働く風向角がある。架台やモジュール設置工事の低コスト化を図り、太陽光パネルの設置を促進するという観点から、屋根葺材の種類などを考慮した架台の最適設計が求められている。今後さらに多様な形状、大きさを持つ屋根にモジュールを設置するには、モジュールまわりの流れをシミュレーションし、モジュールに働く風力の発生メカニズムを把握することが課題となる。

 

参考文献

[1]JIS C8955, 太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法,2017

[2]村上剛,丸山敬,和瓦葺切妻屋根上に設置した太陽光発電パネルに働く風力,日本建築学会構造系論文集, 第89巻, 第815号, pp.1-9, 2024.

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