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インキュベータ/ 飯島由多加・ソフトデベロッパー/岡雄大|「方向性のある多様性」ー密度ある多様性を作り出すものとはー

密接につながる場を生み出す土壌

――密接に繋がる場でつくるにあたって、実際今取り組まれている場所を選んだ理由と、 今後展開する場所の土壌として必要 だと考えられるものはありますでしょうか。

飯島 京都はまず人材面ですね。優秀で進取の気性に富む学生・研究者が多く、学生が人口の1割を占める。潜在的な起業人材と技術シーズの宝庫です。スタッフやインターン、科学技術アドバイザー、各分野に精通したメンター等を探す際にも有利です。

人を惹きつける都市ブランドというのも、大きなプラスだと思っています。教育研究の質の高さはもちろん、観光やビジネスなど様々な目的で、京都は国内外から人を集めることができています。多文化共生や、一色に染めようとしない気風も根付いていると感じます。何より私たち自身が、魅力的な場所だなと思っています。

また、京都は日本の中で見たら東京から物理的には離れていますので、静か。「静かさ」にも色々ありますが、インプットや選択肢が多すぎない、という意味です。落ち着いて考えて、打ち込む・フォーカスするには、京都が私たちの事業やステージにフィットしていると感じます。

もう一つは、少し大きな捉え方なんですけれども、「スタートアップエコシステム」が成熟しつつあることです。京都府・京都市・京都商工会議所などによる、起業関連の取り組みが豊富に用意されています。また、大学や金融機関のスタートアップ向けファンドも充実しています。私たちのように支援と投資をするインキュベータやアクセレータも増えています。そのような人たちが、コンパクトな都市ならではの「顔が見える」距離感でつながっています。新規事業が生まれやすい、起業人材が育ちやすい、失敗してもまた挑戦する気になれるようなエコシステムが、京都には整備されつつあります。日本の中ではかなり恵まれていると思うので、そういった好条件が揃っている、すごく良い場所だと思っています。

 

 外のものを受け入れる体制があることはすごく大事で、結果的に今展開しようとしている場所は港が多くなっています。ホテルも飲食も、その地の歴史を含めて語られる文脈と、現在のリアルな場が、サービスとして重なって提供できていると一番美しいなと。自分たちが語りたくなる文脈があるかどうかは、すごく大事だと思っています。僕らは常に外から来るものなので。語りたくなる深い文脈があって、かつ、外の人を受け入れてくれる土壌のある場所というと、おのずと港になります。尾道と長門に関しては日明貿易の港でもあったので、常に海外からのものを受け入れていました。受容性が元々あった場所だからこそ、僕らみたいな人を喜んで受け入れてくれる文化がそもそもあったんだろうなあ、と思います。

今の話は、僕が能動的に場所を選ぶ理由にはなってないんですが、それは自分の最初のキャリアへの反動かもしれません。投資家として左脳でしか数字を見ない、分析をしないということを行っていたのですけれども、やっぱりそれだけで判断をしていく人生が嫌なんですよね。だから「良い、それ以上説明はいらない」みたいな感じの、「気がいいんだ」みたいな、エモーショナルな判断で事業をやるのが夢でした。今も、Emotionally comfortableみたいな、Emotionally goodみたいなことを大事にして判断しています。

 

人の多面性とローカル

飯島 先ほどのシェフのお話や今の岡さんのお話もそうなんですが、最近「financially unstable でも、emotionally satisfied」というような選択をされる人の話を聞くことが増えたな、と。何かあるのでしょうか。これは。

 あると思いますね。間違いなく。僕は結構コロナの2年半がすごく大きかったと思っています。人間みんな多面性があるし、多面性を生かしきれている状態が幸せだと思っていて。家の自分・友達といる自分・会社にいる自分など、異なる面がいくつもあり、SNSでは複数アカウント持っていることが普通になっています。普通に都市部で生活をしていたら、それらが多面的に満たされている状態があったんだと思うんですけれども、会社に行けなくなり、行動が制限された時に、結構みんな都市を捨てて、都市を出て、あるいは都市に片足を置きながら、コロナ禍でもそんなに罪悪感を覚えないと思う場所に多面性を満たす対象を見出したと思うんですね。それで自然回帰になって、自然の中にセカンドホームを持つとか、通うとか、山登りをするとかっていう風にもなったし、同時に瀬戸田に何度も通う人がいるのは、やっぱり都市のしがらみとはまた違う人生の面を瀬戸田に見出しているからだ、という気がしています。だから、結構コロナを機に、満たされていた人の多面性みたいなところが満たされなくなって、それを満たす手法として、他の今までの生き方から少し変えてみるとか、違うまちと出会ってみるとか、自然の中にいるみたいな行為がより加速したような気がします。

それが、じゃあ今コロナが終わって引き戻されているかというと、意外とその傾向は不可逆だった。料理人とかデザイナーとか、手に職で個として生きている人たちは特に多い気がしますね。面白いと言えば面白いですよね。

鬼崎シェフの運営するMINATOYA  提供:Staple 

 

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