【高野・大谷研究室】「包む音/取り巻く音」

「包む音/取り巻く音」

教授 高野 靖
准教授 大谷 真


​緒言

 日常的に我々が置かれる環境では、例えそれがどれだけ静寂な場であったとしても、必ず何がしかの音が聞こえてくる。それどころか、目を閉じて耳を澄ましてみれば、我々がいかに多様な音に包まれ、そして、取り巻かれて日々を過ごしているかが分かるだろう。我々が様々な場面で聞く音は実に多様であり、心地よいものもあれば不快なものもある。また、必要な音もあればそうではない音もある。心地よい音はより心地よく、不快な音はなるべく減らし、そして、必要な音を必要な人に適切に届ける。人々にとってより良い音環境を実現するために成すべきことは多い。

 建築とは物理的あるいは心理的な境界により空間を区分するものである。物理的境界としての建築は、その境界によって音のエネルギーを低減させ我々を不要な騒音から保護するシェルターであり、その境界での音の反射により内部空間の音エネルギーの散逸を防ぎ持続させることで適切な響きを創り出すための箱でもある(写真)。音環境を形成する上で建築という物理的存在が果たす役割は大きい。しかしながら、快適な音環境を実現するためには、建築そのものに留まらず、そもそもの音エネルギーの発生源である音源が有する性質や、音を最終的に受容する人間の生理的・心理的な特性をも考慮した、幅広い観点から音という現象について考えることが必要である。環境構成学講座音環境学分野¹では、このような視座に立って研究を推進している。

 本プロジェクトページでは、本研究室で行っている音環境に関する研究について俯瞰すると共に、幾つかの個別の研究テーマについて紹介する。

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音楽ホールでの音響測定・録音の様子(演奏:アンサンブル・セリオーソ)

【参考文献】

  1. 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 環境構成学講座音環境学分野ウェブサイト: http://acoust.archi.kyoto-u.ac.jp

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