【神吉研究室】Planning of Dynamism

現代(いま)、町家に住むということ|清山陽平

通りよりミセの間を眺める

私は現在、京都市伏見区にある築129年の京町家に住んでいる。今もこの文章を家のミセの間で打っているが、通りを歩く人や車の往来を眺めながら、逆にこちらの生活を覗かれるという都市との距離感、関係性は新鮮で面白い。曾祖父の代から受け継いだこの家であるが、相続問題によりその存続が危ぶまれるようになったことを契機に、ミセの間を通りに対して開く活動を「保全」の一環として行っている。
 かつてからパブリックとプライベートの中間領域としてあったミセの間であるが、映画鑑賞会や展覧会を開催する中で感じるのは、近代以降住宅から取り除かれていったこうした空間のもたらす経験の豊かさである。ミセの間は多くの他者同士が出会い、関係性を結ぶ結節点として機能しており、とりわけ近隣住民とのコミュニケーションの中から、私の中の伏見という町自体が再編成されていく感覚は、現代住宅では得難い。
 今後も「現在、町家に住む」ということの価値を発見・発信することを通して、町家の保全につなげたいと切に思う。

関連記事一覧