【神吉研究室】Planning of Dynamism

元西陣小学校活用プロジェクト|太田 裕通

図1 西陣ベースメント提案図の全体像

図2 小学校跡地活用委員会の様子

図3 元西陣小学校模型

■概要 ―京都における番組小学校校舎利活用―

京都には明治2 年に創立された番組小学校の戦前校舎が多く現存し、統合などによって廃校となった場合でも校舎は利活用している事例が多い。本プロジェクトの対象である元西陣小学校は平成7 年に桃薗小学校と統合されて以来空き校舎であり、時々の一時的な利用以外の活用方法は未だ決まっていない。平成26 年度より西陣学区住民福祉協議会によって組織された「学校跡地活用委員会」に研究室メンバーも参与し、この2年半、活用に関しての議論が進められてきた。元西陣小は地域のシンボルとしても愛されている一方で、改修補強の必要性、活用の方式によっては失われる可能性がある本来的な価値等が重要な論点となっている。本稿は、学生メンバーを中心にこの議論経過と共に行ってきた活動の報告である。

■建築的価値 ―現存する元西陣小学校校舎―

平成26年度の同委員会における勉強会において、京都府立大学大場修教授、京都華頂大学川島智生教授より講義いただいた。その結果として、現校舎の価値を以下のように要点をまとめた。
①本館・教室棟・体操場 が揃う京都番組小学校としての全体像が現存する
②昭和9年の室戸台風災害前に設計され、復興事業以降の標準化された校舎ではないため固有性が高く、装飾的な校舎から構造そのものを活かしたシンプルなデザインへ変わる時代の象徴的存在である
③京都市役所の新進技術者たちが校舎建築設計に携わっており、学校校舎は当時の京都市役所の技術者が手がけた公共建築作品のうち、中心的位置を占める

■活用ビジョン研究 ―「西陣ベースメント」構想―

コンセプトは、「番組小学校の従来性をベースに『小学校らしさ』を残した活用案を考える」ことである。「宿泊施設」の最低限の機能も配置した上でモザイク的利用が教室ごとにあらわれ、時期による可変性を組み込む。利用は「地元利用」から宿泊施設の客室の「固定利用」まで教室ごとに柔軟性のある運営とし、年間を通しての稼働率によって校舎利活用について経済的可能性を伸ばすことを考えている。このような運営を可能にするために地元、外部民間、専門家、所有者である地元自治体による共同会社の設立を想定し、それぞれの運営・経営のシェア可能性をさらに検討する。柔軟な運営形態の提案は、現在の元西陣小学校を部屋単位で活動の場として用いる地域住民・他諸団体や、小学生野球クラブといった方々の利用、また夏祭りのような地域のイベント時の学校全体の利用を地域が今まで通りに継続できる考え方であり、これからも元西陣小学校が地域に根付いた場所―ベースメント―としてあり続けるためのアイデアである(図1)。

図4 元西陣小学校模型


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