【神吉研究室】Planning of Dynamism
社会関係の中で|神吉紀世子
ここで紹介されているのは、研究室のメンバーそれぞれが「自力で」進めているプロジェクトである。学士・修士・博士学位のための研究はまた別にある。教員はどこに介在しているか様々であるが目立つことは可能なかぎり少なくするようにしている。
大学研究室は受託研究から自主研究までマネジメント次第で幅広い活動スタイルが可能で、ケースに応じ関わる主体間での責任分担を見極めてスタイルを組み立てる。大学の演習・実習等と、社会の中では現実である活動を、いかに連動させるかも重要なマネジメントの一つである。地域の諸関係の中に「大学の人」はいかに位置づくべきか、は結構難しい。地域状況の一方的消費にならない、かといって過度に遠慮しない、適切な責任分担のもとでこそ、本人名義の成果が明確に成立する。そうしたハッピーな大学と地域の関係を継続的に吟味することを伴って、大学の人は地域に本当の意味で居続けることができる。月日の経過とともに位置づけも変化する。
教員の目立つことを少なくするというのは、学生の位置づけを気にかけつつ、関係を信頼して任せるということである(右図)。
しかし、実在の社会に関わるのであるから、トラブルの種は実に複雑に発生する。トラブルの種に気がつき早く対応できるか、教員は試される。最前線にいる学生が早く察知し相談してくれれば一番である。
研究室は都市・農村計画(Planning)を扱っている。 Planningとは定義が難しいが必ず対象として物理的地域と複雑な社会関係が登場する。一般的にイメージされるのは「調査と提言」「法定計画立案」等であろうが、地域状況と社会関係の推移の中でちょうど実現可能な策をつくりこみ、近い/遠い将来に近づけていく種々の営みを手掛ける。関わった者は責任を担うが個人による統率制御はせず、策が柔軟に影響をもち将来につながっていくアウトカム志向がPlanningの醍醐味である。ここに専門性や創造性が問われる。地域状況と社会関係を常に注視し、その中で影響の発信元となる主体としての自身の可能性について、的確に捉えることが身につくよう、学生諸氏に期待したい。