
【林研究室】コンピュテーションが形作る建築空間
【Hayashi Lab】Architectural Space Shaped by Computation
総評:長友連
構造系の研究室のスタジオは、これまで、2021年度と昨年度の大﨑・張スタジオ、今年度の林スタジオの3回開講されている。
今年度の課題内容について
近年の計算機の性能や施工・製作技術の急速な発展にともない、多様な建築形態がデザインされるようになった。意匠のみならず、構造・環境・施工などの種々の設計条件を満足し、それらを高度に統合するためには、デザインとエンジニアリングを横断できる設計者の存在がますます重要となるだろう。 本スタジオでは、解析ツールやプログラミング、デジタルファブリケーションを設計過程で積極的に用いて、 コンピュータによる形態創生・解析技術が拓く革新的なデザインを探求する。プログラム・敷地等に制限は設けない。構造系教員が有する構造解析・形態創生のノウハウを吸収しながら、< 現実世界-バーチャル空間>、< 人間の直感-コンピュータによる自動化 > が調和した新時代の建築設計プロセスを組み立てる。 構造力学やプログラミングの知識を適宜吸収しながら課題に取り組むものとする。
現実世界とバーチャル空間について
例年の課題内容との大きな違いは< 現実世界-バーチャル空間>に関する言及である。これまで2回のスタジオ課題では、構造計算やGrasshopper上でのシミュレーションを行い、スケールの小さな模型は制作していたものの、実スケールでの検討はなされてこなかった。そのため、施工や製材、接合部、材料といった現実的な要素が欠如した提案が多く、バーチャル空間上にとどまった提案が多かった。しかし今年度は、スタジオ受講者3名それぞれが、実スケールもしくはそれに近いスケールでのモックアップを製作し、バーチャル空間から現実世界へと踏み出す提案を行った。この実践によって、バーチャル空間と現実世界のあいだにあるギャップを自らの手で埋める試みがなされ、より説得力のある提案となったと言えるだろう。
意匠・計画と本スタジオの関係について
今年度の新たな試みとして、平田研究室との合同エスキスが開催された。これまで2回のスタジオ課題では、講評会以前に意匠・計画系の研究室の先生方と交流する機会はなかった。また、少なくとも昨年度は、提出直前に意匠・計画的な要素と無理やり絡めようとしたり、用途を切り捨ててパビリオンとすることで形態の話を優先したりしていた。しかし今年度は、5月13日に平田研との合同エスキスが開催されたので、比較的早い段階で、意匠・計画的な話を意識せざるを得なくなったのではないかと思う。最終的に彼らの作品が、意匠・計画的にどれほどの完成度を持っていたのか、またこの合同エスキスが彼らの作品にどのような影響を与えたのかを私には判断することはできないが、この合同エスキスで「1分の1がほしい。」とおっしゃった平田先生の言葉がおそらくモックアップ製作のきっかけとなったと考えられるので、平田研との合同エスキスは非常に有意義であったと言えるだろう。
本スタジオの取り組み方について
本スタジオでは、既存の構造システムを選択し、再現し、応用するという設計方法が定着しつつある。この設計方法は、Grasshopperやプログラミングを学びながら、構造と意匠の統合を体験できるという点で優れていると思う。一方で、全く新しい構造システムが生まれることはほとんどなく、ある程度その全体像が見えている「正解」を目指し、その道筋をたどるという行為は創造的なのかという疑問が残る。もちろん、その過程に技術的・思考的困難があることも、3ヶ月という短い期間で新しい構造システムを構想することが容易でないことも理解しているが、どこか味気なさや、もどかしさを感じてしまうのも事実である。まだ見ぬ「正解」が次なるスタジオで誰かの手によって形になることを、心から楽しみにしている。



京都大学大学院工学研究科建築学専攻 建築構造学講座 林研究室
Hayashi Lab develops innovative architectural/ structural design methods through novel computational techniques for safety, efficiency, sustainability, and aesthetics.
(林研究室では、安全性、効率性、持続可能性、美しさを考慮した新しい計算技術を通じて、革新的な建築/構造設計手法を開発しています。)