自治寮と、暮らしの姿

概要

学生自身が直接、寮の運営を担う「自治寮」。自治組織を持つ 学生たちが集って暮らすことによって生まれる空間は、一般的 なシェア居住にはない魅力を持つ。本特集では、全国に残る数 少ない自治寮の中で 4 つの自治寮(吉田寮・熊野寮・日就寮・ 恵迪寮)を取り上げ、現地調査と寮生へのインタビューを通し て、暮らしの姿を明らかにすることを目指す。 さらに座談会企画では、調査によって見えてきた各寮の特色か ら、編集委員たちで 4 つの寮を横断的に比較・議論し、自治 寮の暮らしにおける共通点や相違点、暮らしの根底にあるものを探った。

1――まず、吉田寮と京都大学の関係について教えてください。

原田 吉田寮は京大の学生寮で、自治寮というシステムになっています。自治寮では、内部の政治的なシステムが寮生に任さられています。吉田寮というのは学寮の中でもかなり古い寮で、 食堂が築 140 年くらい、現棟が 110 年ちょっとです。廉価な学生寮というのは、いろんな人が学問を享受するために必要であり、お金がある人だけが国立の大学に入れるみたいなことはあってはならないわけで、我々はそれを守ろうという話です。 大学とは確約と団体交渉の 2 つを組み合わせて関係を築いてきたんですが、それが蔑ろにされてきたのがここ数十年の話です。例えば、食堂にはご飯を作る職員さんがいて、事務室には守衛さんがいたんですが、それがすべて引き上げられてしまったんです。というのも、1968~69 年のあたりに、学寮自体 がカルトとか政治セクトの温床になってるんじゃないかというのが問題化しまして。それで、中曽根総理大臣のときに学生寮の正常化という言葉で、学生寮を脱政治化する、無力化する、 潰すといったことが図られました。そして、大学は我々を現棟の方から追い出そうとしたんです。安全性の懸念があるからという口実で出ていけと。でもそれは表向きの理由で、出て行かせてこういう場所をどんどん奪っていこうとしているように僕は感じているし、その動きはどんどん強くなっていってしまいました。国立大学の法人化という背景もあり、学生を呼び出して恫喝するなどといったこともありました。そういう感じで、 大学が取り合ってくれない。でも、我々はそこに住み続ける必要があるし、守る必要がある。裁判の話もそうですけど、不法滞在として学生が学校に訴えられるという、ちょっと奇妙なことになっています。僕らは守られるべき立場のはずなのに、逆に攻撃されるみたいになっているんです。 このあいだ第 1 審 判決があって、一部勝訴となりましたが、我々も大学も控訴する。そこで控訴審がどうなるかなという感じです。

――寮自治会の権限について教えてください。

原田 権限としては、寮に誰が入るかとか、どういうイベントをするかとか、どういう声明文を出すかとか、大学に対してどう出ようかとか、そういうことを決めたりします。あとは工務店とかに補修してもらわないといけないところがあるので、それを大学に言いに行ったりします。新棟は築 8 年で結構受け 入れてもらえるんですが、現棟はなぜか渋るんですよね。トイレすら補修してくれない悲しい状態です。2 階とか雨漏りのせいでひどい部屋もあって。寮自治体が持っている権限っていうのは、そういう大学との交渉とか、渉外とか、内部のこと。寮自治会自体が寮に住んでいる全員のことを指しているので、生 きていたら必要なことは全て我々が決めている、僕はそう言えるんじゃないかなと思います。

――吉田寮では、基本的に対話を重んじているんですね。

原田 例えば喧嘩が起こった時も組織としては仲裁しないんで すよ。そういうことをすると権力性が出るし。あと敬語も、ずっと使っているとあらぬ権力性みたいなのが出てきてしまうんですね。そういうのってやっぱり不健全なんです。普通のコミュニケーションではそうじゃない場合もありますけど。自分たちが他の人と平等に関わり合えるような、そういう場や雰囲気作りを続けていくべきだと思います。

――吉田寮が持っている権利として、外的に認められているも のはどういうものになるのでしょうか?

原田 第一審判決で言われていたのは、僕らはいわゆる権能なき社団になるんですね。つまり我々寮自治会という存在には、守るべき法益、生活や学問の需要、そういうものがある。だから、みんながここにいて、守るべき価値があって、それのために生きているという。その守るべきものというのは、対外的に判決でも認められているなとは思います。

――吉田寮が外部とどのように関わっているのかについて教えてください。

原田 例えば、見学に来た人たちを案内できる寮生は多くて、 案内ルートなどを寮内で受け継いだりしています。他には地域の夏祭りに出店したり、イベントを行ったり。外部の人でも会

議で認められれば、食堂で演劇やトークライブなどのイベントを開けます。裁判の前にもっと知名度を上げようと頻繁にイベントを打ったり、外部の一般の人たちに打診してみたりもしています。地域の消防団の訓練に出ている寮生もいますし、相互理解や共生みたいなことに対しては、個人でも団体でも積極的に取り組んでいるかなと思います。

——建物の周辺はどうなっていますか?

原田 キャンパスと何の隔たりもないんですよね。大学の建物の窓から抜け出したらすぐ吉田寮。駆け込み寺みたいな使い方ができる感じになっています。吉田南キャンパスの中には喫煙所がないので、喫煙者がここに来るんですよ。周辺部分や、食堂にも寮外生が来ていいはずです。外から全然知らない人がピアノを弾きに来て満足して帰っていったり、知らない人が寝ていることも日常的にあります。正直、誰でも来て良い、みたいなところではあります。現棟の方は生活空間ということもあって、寮生の許可なく入るのはやめてくれとは書いてありますけど、食堂の方は一部入らないでほしい場所もあるけれど、大部分は普通に入っても大丈夫、という感じです。

——外も食堂も、タバコを吸いに来る人が多いですが…

原田 分煙がなってないんですよね、悪いところではあると思うんですけど。基本的にどこでも吸っていいんだけど、例えば居室とかは相部屋なので、喫煙部屋みたいなのは設けていたりします。ベランダで喫煙ができるような。外はむしろ吸っていいでしょという感じです。

 周りの人に許可をとる人が多かったんですけど、この2、3年でめっちゃ減って、みんな吸うようになっちゃって。配慮が足りないと思います。

原田 たしかにそうです。ごめんなさい、反省します。公然の喫煙所みたいになっちゃってるんですよね。だからもう誰彼構わず吸っています。一応、建物の登記上、寮の門と食堂の間って誰の土地でもないんですよ。だから、喫煙というわけでもないんですけど禁煙じゃないスペースがあって、そこで吸ってる職員さんとかもいっぱいいて、吉田寮まで来れば良いのにと思います。

——寮の中の共用部の数とそれぞれの規模を教えてください。

原田 よく留学生が映画とかを映してる12畳くらいのビリヤード部屋っていうのがあって、頑張れば20人入れるかなぐらいの大きさです。一面の壁がすごい真っ白で、そこにプロジェクターで映すと映画が見れる。真っ白といってもヤニでは汚れてるけど。受付は、畳4つ敷いてるだけで、そこでタバコ吸ったりとか、本読んだりとか、課題してる人もいるし、絵描いたりしてる人もいるし、ゲームやってる人もいるし、みたいな。麻雀部屋は元々守衛の人の部屋で、4畳半ぐらいしかないんですけど、雀卓がドンと置いてあって、みんなで昨日も麻雀打ってたんですよ。その隣の漫画部屋はもうちょっと広くて、漫画がいっぱいあって、漫画読む人もいるし、ボードゲームする人もいるし、会議することもあるし、みたいな感じですね。ゲーム部屋にはいっぱいモニターがあって、エアコンがついてて、なんかずっとめっちゃ涼しいみたいな感じです。元々本当に茶室だった「茶室」には、いろんな本があって、自治寮ではよくある話ですけど、マルクス・レーニン集が全てあるんです。その部屋に帰ったらソファの上に蛇がいたこともありました。かつて新入寮生はそういう自然豊かな部屋に入って、病気にかかりながら強くなって、みんなで過ごすことを覚えるという。そういう部屋が、茶室と旧印刷室です。

——新棟に共用部はありますか?

原田 地下にあります。キッチンがあって、すごく綺麗で、冷蔵庫も5台ぐらいあって、コンロもちゃんとあるし、流しもあるし、料理できるスペースはアイランドキッチンみたいな。トレーニングルームみたいなブースがあったりとか、あと、ランドリールーム、シャワー室、ちょっとみんなで集まれるピロティ的なものも複数個あったりしますね。各階、料理するための流し場みたいなのもちょっとずつあります。

——吉田寮の中においてもコミュニティは分かれていますか?

原田 そういうのはどこに行ってもあるんじゃないですかね。仲の良い人悪い人とか、趣味が合う合わないもありますし。 例えばゲーム部屋っていうのがありますけど、あそこにはゲームが好きな人がいますよね。ゲーム好きじゃないのにいる人はあんまりいないと思うんです。用途で場所が分かれているっていうのは、それを必然的に招くんじゃないですかね。

 最近は、留学生の女性が開かれたスペースで映画を見る会とかやってますね。

原田 たしかに、留学生のコミュニティは強いね。

 なんか内向きの部屋にたまるような人がいたら、それを壊しに行く人とかもいて。

原田 うん、確かに内向きの雰囲気を壊す人がいたりはする。

 集まって、意味わかんない本当にしょうもない話とかをしているんで、良くないんじゃないかって。殴り込みじゃないけど、解散した方がいいんじゃないみたいなのはありましたね。最近はあんまりないですけど。そもそもコミュニティといっても、ある部屋に集まって、いつも同じ人たちが喋ってというのは少ないとは思います。

原田 みんなコミュニティで自分を規定してないことが多いですね。自分は自分だし、みたいな。いろんなところに行ってフラフラしてるんですよ。僕だったら、食堂で飲んだりとか、留学生と居間のところで遊んだりとか、麻雀したりとか。でもそれって必ずしも同じメンツでもないし。もちろん活動的な寮生と活動的でない寮生、引きこもってる寮生とかもいますけど、いろんな人がいるんで、いろんな人と喋ってるような人が多いんじゃないかなって思います。そうでもしないと、100人以上と住めないですよ。どこか、そういうノマド的な性質は持っているんじゃないですかね。

(吉田寮 2024 紹介パンフレットより引用)

食堂

——(作成した実測図面について)このときと比べると食堂内の様子がかなり違いますが、実測時から動いていない一部の机やソファ(主に左側)の配置も変わることがありますか?

原田 うん、全然違いますよ。このときに椅子がいっぱいあったのは、演劇の公演をやっていたからだと思います。スポットライトもあるし。みんな適当に良いように使っています。今はイベントの片付けがされていて、だいぶ綺麗な方です。昨日は畳や椅子を並べてトークライブのイベントをしていたんですけど、例えば七夕のイベントでは真ん中に六角形のブースを作って音響やDJができるようにしたり、盆踊りができるようにステージを組んだりしました。イベントごとに結構形が違ってフレキシブルです。みんな自由に使って、自分たちのクリエイティビティが存分に発揮されてるんじゃないかなって思います。

——そういったイベントの主催は全て寮生ですか?

 いや、食堂と厨房に関しては寮生・寮外生関係なく、誰でも企画を持ってきて良いです。

原田 ここをどう使うかを決める会議があるんですよね。それは結構誰にでも開かれていて、 プレゼン資料を持ってきて、いろんな人でいろいろ話して、じゃあ決定で、となったらこの日はこの人たちが使うという感じで決まっています。寮生だけじゃなくて、外部の人もいっぱい企画しているし、一緒にやることもあるし、本当にみんなに開かれていていろいろですね。厨房とかも、料理する人がいた時はそこを使ってもらっていたんですけど、今は普通にキッチンになっています。その奥にはちょっとスペースがあって、そこをスタジオみたいな感じにしています。音楽の練習だとかセッションみたいなものができる場所になるんですけど、そこもいろんな人に開かれていて、かなり安い料金で使えます。ドラムとかも使えたりするので、使っている人は寮外生でも結構多いかなとは思います。厨房の機材を使って練習したい場合は、オリエンテーションや使用者会議に参加してもらっています。ピアノは近大の先生がくれたんですよね。それで寮で管理することになってたんだけど、最近は外から全然知らない人が弾いて満足して帰るようなこともあります。

——イベントの頻度はどれくらいですか?

原田 季節によりますね。8月は多いかも。夏手前とか、新歓期の5、6月は多いですね。

 食堂使用者会議っていう会議があって、このカレンダーの空いてる日を見て、1ヶ月後以降くらいを目途に、やりたいイベントの立て込み設営、本番、片付けなどの日程申請や承認をする会議が月2回あります。多いと半分以上埋まっていて、少なくとも月1くらいでイベントがあります。

——食堂で気に入っている/入らないところはありますか?

 厨房の棚に、もらってきた食器を共用物として何個か置いているんですけど、みんなそのまま持っていっちゃったりする。

原田 調理台の下にも、調理器具とか調味料とかめっちゃ入っ

てるけど、埃かぶってるからちょっと気持ち悪い。油汚れがついてたり…そんなところで料理作りたいかって言われると、なんか微妙じゃないですか。

 冷蔵庫にも、イベントの時に全然知らない人がよく分からないものを入れたりしてる。変な味噌とかあります。

原田 空間自体は好きなんだけど、使い方が好きじゃないっていう感じです。厨房はわりと生活感にあふれています。でもこの寮に入って衛生観念がちょっと変わったかも。シケモクとか吸うのに全く抵抗がなくなりました。最近道端に落ちてるのとかも結構吸えるようになっちゃって。

——お二人はイベントがないときもよくここにいますか?

原田 僕は割といます。彼女(林さん)は寮外生なのでここに住んでるわけではなくて、たまにここで寝ていったり、自宅に帰ったりといったところですね。僕は夜と早朝にここにいるので、彼女とはたまに会うって感じです。食堂では基本ずっと誰かが寝ています。他には、タバコ吸ってるか、お酒飲んでるか、手元のもので遊んだりとかしています。本を読みながら「わからない」って大声出して暴れている人もたまにいますね。実家みたいに住み慣れているのでみんな独り言が多いかもしれないです。麻雀の卓で麻雀やる人もいます。

 あとは仲の良い人たちで集まって、ボードゲームをすることもあります。イベントの配置によって物の配置も変わってくるので、畳を出したところで作業することが多いです。食堂はリビングみたいなものですね。

——印象的なエピソードなどはありますか?

原田 この間びっくりしたのは、僕が朝4時くらいに帰ってきてここでタバコ吸ってたら見慣れない人がいたので、話しかけたら他大学の教授だったんですよ。タバコ吸いながら、難しいスピノザかなんか読んでました。すごい有名な人だったみたいで、なんかびっくりしちゃいました。

——食堂という空間のどういうところが好きですか?

 寮に初めて来たのは小4で、その後、寮のイベントに参加したんですけど、中学生と大学生なのに全然敬語を使わなくて、フレンドリーに何でも教えてくれました。今も、しょうもないことで喧嘩や小競り合いをしてみたり、一緒に遊んでみたりっていうのができますし、寮全体が好きなんですが、特に食堂は入れ違いで不特定多数と話せる空間なので好きですね。

原田 同じです。僕は去年大学に入って、去年の寮祭ぐらいの時期からちょっとお世話になったりしていたのですが、いろんな人と出会う場所ってやっぱり楽しいな、大事だなって思って。この部屋自体には区切りも何もなくて、ただ家具が無造作に置いてあるだけっていう。だから、いろんな人の会話がすぐそこで聞こえるし、バラバラなことをしているけれど喋ることができるし、それが楽しいなと思います。それが寮に入るきっかけになったかな。いろんな人がいて、自分1人じゃない。そういう外の刺激が欲しかった。

——他の人が同じ空間にいるのが心地良いですか?

 自分はそれに慣れちゃって、逆に人がいないと落ち着かなくなっちゃったんですよ。ちょっと思ったことをパッと口にして、答えが返ってくる。みんな頭ごなしには否定してこないんです。何か言ったら、とりあえず聞いて、「自分は違うと思うよ」みたいに言ってくれる人がいっぱいいます。何でも言っていいけど、自分が間違っていることはちゃんと教えてくれるし、ちゃんと対話ができる。

原田 もともと、人間社会や人間の暮らす場所ってそういうものだったんじゃないですかね。そもそも人間がひとりで暮らすようになったのって、時代でみると浅いじゃないですか。個人主義というか、どんどん人間と関われる場所が少なくなって、隣に人がいるのを感じられない状態になって、悲しいなと僕は思います。だから、僕はここがあって良かったなと思いますね。

——食堂で寮の会議をするときには畳を敷くなどすることが多いですか?

原田 椅子が結構あるので椅子に座ったり、畳がもうちょっと低く積まれている時はその上に乗ってる人がいたり、本当に自由です。会議のときもふらふらしています。大人数だと食堂が多いですけど、会議はいろんな場所でやります。寮以外の会議とかもあって、2時間で4つの会議に出なきゃいけないみたいなことがたまにあり、そうなると寮の部屋から部屋に走って、「ちょっと30分だけ」とか言って出たりもしています。会議ができる部屋はいっぱいありますね。食堂は全体的な会議でよく使われているイメージです。

居室

——部屋の使い方を教えてください。

山本 読書かサイクリング、午後9時頃から就寝まで使用しております。

——気に入っている/入らないところはありますか?

山本 気に入っている場所は、やはり壁一面の窓と、その手前のライティングビューロー。秋は、窓の外のイチョウが黄色く色づき、赤いフローリングとフィットしてたいへんきれい。気に入らない場所は、窓の建付け。夏場は虫が入ってきてしまう。

茶室

——この部屋の使われ方を教えてください。

霧山 ここは、たまり場になっています。私が1番この部屋にいることが多くて、24時間の中で16時間くらいいるかな。だいたいパソコンで勉強とかしてます。狭いっちゃ狭いですけど、これでちょうどいいです。

——他の人たちはここをどう使っていますか?

霧山 勉強とかバイトで忙しいので、あんまりこの部屋にはいない気がします。いるときは、喋ったり、ゲームをしたりします。椅子とテーブルがあるので自由に動かして。ソファ(A)の下に畳の段差があって、そこに座るとかなりイライラするので、あまり座りません。そっちの方がなんか涼しい感じがするので、最近はそのソファでくつろいでいたりしてます。その人は自分のだらしなさにうんざりしてベッドから移動して、最初はここ(B)でくつろいでたのが、今はそっち(A)になっています。

——友達が来たときなどはソファの方で話しますか?

霧山 基本的にはそうですね。元々テーブルと椅子がこっち(C)にありましたから、こっちで喋ったりしました。

——霧山さん以外の人がそこ(D)にいることもありますか?

霧山 それはないですね。もちろん頼まれたら断らないので使ってもらっていいんですけど。

——他に机らしい机がありませんが、他の2人は霧山さんのように自分の場所を持ってはいないんですか?

霧山 そうですね。他の人は別のところに行って勉強したりすることが多いので。私のパソコンは重いので持ち運ぶのが面倒で、ここでしようと思ってタダで机をもらってきた。

——他の人はここで勉強しないんですか?

霧山 この間はレポートとか書いてたかな。ちょうど今日エアコンをつけて、だいぶ涼しくなったので、これからはもう少しこの部屋にいてくれるかな。ちょっと寂しいので(笑)。人が部屋に来てくれて、飯行こうって言ってくれるのが一番嬉しい。

——他の人が普段ここに立ち入ることはないですか?

霧山 あまりないですね。ここにたまっている人も私も1、2日くらい別のところで過ごすことがありますし。ここは結構暑いので、自室で寝ています。

——この部屋について気に入らないところはありますか?

霧山 気に入らないところは、あそこ(E)ですかね。ベッドの奥にスペースがあって、もう15〜20年前の使ってないものとかゴミを置いてあるので。あの場所を使いたいので捨てようと思ってるんですが、グループLINEで誰のものか聞いたりしても、なかなか進まなくて。ベッドの向こうがデッドスペースになっているのが、あんまり好きじゃないです。ここの本棚(F)も、まだスペースがあるのであんまり好きじゃない。

——この部屋の印象的なエピソードはありますか?

霧山 蛇が現れたことがあって。部屋に入ってきた人がソファ(A)を見て、「あれ何?え、うわー!蛇だー!」って。人を呼んできて、蛇を捕まえようとしたんですけど、蛇って意外と早い。結構飛びますよね。タンスの後ろ(H)に行って、その箒で出そうとして、その箒はそれからそのままずっとそこにあるんですけど(笑)。誰かが手を入れて、つかんで引っ張り出した。で、私の布団袋に入れて外に出した。それが印象的でしたね(笑)。そのアオダイショウをペットにしようかなと思ったんですけど、かなり金がかかるので、結局庭に逃がしました。

旧印刷室

——この部屋の使われ方を教えてください。

霧山 結構広いスペースなので、茶室もそうですが、寮生のたまり場となっています。旧印(旧印刷室)バンドっていう、積極的な人になるためのいろんな訓練と言っていいのかな、そういうイベントとかプランニングをするときに、この部屋に集まって、いろんな話をしました。ここには20人くらい入れます。みんな、そこのベッドにいたり、真ん中のこたつで誰かがパソコンで議事録をとったりして、会議をやります。こたつがみんなの共有スペースになっていて、そこに座ってパソコンいじったり本を読んだりします。2か月前まですごく大きいテレビがあって、みんなここで映画を見たりしてました。この部屋は汚いっていうことで知られていて、今はなんと綺麗な方なんです。「今の旧印は普通に床見れるで」って言われてます。

——ここってあんまり普段は人いない感じなんですかね。

霧山 最近はそうです。ただ、2ヶ月前までだったら、結構いつも誰かここにいた。3、4人ぐらいずっとここにいて、喋ったり食べたりして。友達がここで沖縄そばを作ってくれて、みんなで食べたりもしました。カセットコンロがあるので、大体ここで作ってました。さすがに玉ねぎは、キッチンで切ってから持ってきましたけど。

——気に入っている/入らないところはありますか?

霧山 私、このこたつは結構好きです。場所的にみんなに近いし、この部屋に入ったら、みんなこたつに入って喋ったりしますんで、入るときはなんか快適な気持ちになります。

——普段この部屋にはどのくらいいるんですか?

田中 そんなにいないかな。寮祭のころはけっこういたんですが。

——今ここに出入りする人はあまりいないですか?

田中 いないんじゃないですかね。時々出入りする人が2人くらい。あと、隣にゲーム部屋っていうのがあって、そこの人たちが、 冷蔵庫に水かなんか置いてって、ゲーム終わった後来て飲んだりしてるのかな。この間僕が荷物取りに来たときに、ここでピザパーティーやったような形跡があって、ゴミ片付けていけと思ったんですけど(笑)。だから一応交流の溜まり場みたいに機能してるのかもしれない。ここ(A)が交流っていうか、課題やったり、みんなと話したり、なんか食べたりする場所って感じですかね。話したり食べたり課題したりするためにこたつに入るみたいな。

——ここで課題することもあるんですね。

田中 ありますね。「意味わかんない」とかぼそっと言うと、みんなで集まって「これこういうことなんじゃね」みたいな感じでやったりします。

——1日の中でここで過ごす時間はどれくらいですか?

田中 みんなすぐ近くに学校があるから学校でできることをやる感じが多くて、寝る2時間くらい前になるとここに全員いる、みたいな。だから3、4時間くらいですかね。

——この部屋の思い出を教えてください。

田中 酒飲みながら話す、みたいなね。特別なことっていうよりは、駄弁ることが多いですかね。しょうもないことばっか話してるんで、あんまり覚えてないですよ。

麻雀部屋

——この部屋の使われ方を教えてください。

井谷 普段からこの部屋を使っている寮生は8人くらいですね。だいたいいつも麻雀をしようと呼びかける人がゲーム部屋をよく利用する人たちで、 その人たちが、この部屋で固定で麻雀をやってるという感じですね。麻雀卓の周囲にある椅子に座って4人で打つんですが、他にも椅子があって、余った椅子に座って何人か観戦してる人がいるときもあります。

——その8人は、同時に部屋にいることが多いのですか?

井谷 いえ、結構頻繁に打っている人が4人ぐらいいて、その人たちがいない時のサブみたいにもう4人ぐらいいて、たまにその4人とも打ったりしますね。そんな感じで8人の中でも結構打つ人、打たない人で分かれています。

——麻雀を打つ頻度と時間はどれくらいですか?

井谷 最近はテスト期間で余り頻繁に麻雀をしていないですが、テスト期間ではないときは平均して週に2回程打っています。四半荘(麻雀における基本的な試合進行形式)1セットでやっているので時間にばらつきはありますが、大体2時間くらいはいるかなと思います。いつも2時間くらいのプレイリストをオーディオで流しながら打っていますね。

——時間帯はいつが多いですか?

井谷 夏は、昼だと麻雀部屋にはエアコンが無くて結構暑くなるので、大体夜か夕方あたりにやることが多いですね。エアコンの代わりに扇風機と、隣の事務室にあるクーラーからダンボールで冷気を誘導して冷たい風を取り入れています。

——席順や座る場所は固定ですか?

井谷 いえ、席順は風牌(東、南、西、北と書かれた四つの牌)をシャッフルして引いて決めています。

——この部屋を麻雀以外の用途で利用することはありますか?

井谷 僕は高校の友達とビデオ通話をしたりします。自分の部屋が相部屋なので、 その部屋でビデオ通話でわいわいするのは迷惑かなと思って。この部屋は基本的に麻雀をしていないときは誰もいないし、あまり外に音が漏れないので音を出して何かをするときに使うのにちょうどいいと思います。それ以外で入ることは滅多にないですね。暇つぶしで、たまに盲牌(麻雀牌の凹凸を指で触ることで何の牌かを見ずに識別すること)の練習をしたりすることはありますが。

——他の場所で麻雀を打つことはありますか?

井谷 食堂に全自動卓があって、そこでもたまに打ってます。食堂で打つ時は初心者というか、麻雀を始めたての人が若干多いですね。やっぱり牌を積むのが難しかったりするので。逆にこの部屋の雀卓は手積みなので、手積みが好きな人が集まっています。僕は新入寮生なのであまりよくわかってないんですが、昔全自動卓があったみたいで、今はそれが壊れて、その上に普通の雀卓が置かれています。

——この部屋の印象的なエピソードなどはありますか?

井谷 伝聞ですが、夜通し麻雀を打っていて、朝日が登ってくると、ちょうどそこ(A)の窓から光がパーっと差してきて、窓の前に座っている人に後光が差しているように見え、 その人の一手が神の一手みたいになってかっこよかったというエピソードがあります。僕はそこまで夜通し打っていた経験がないので、実際に見たことはないんですよね。あとは、去年あたりに退寮する寮生への追い出し会みたいな感じで、麻雀を100セット打つというイベントがあったらしいというのも聞きました。

——気に入っている/入らないところはありますか?

井谷 気に入らないところは、ゴミが多いところと暑いところですね。麻雀を打ちながらビールや缶ジュースを飲む人が多いんですが、全然片づけたりしない。あとは個人的にこっちの席(B)は全然勝てないので、この席は余り好きじゃないですね。逆にこの席(C)は音楽がよく聞こえて楽しいので好きです。

タバコ部屋

——この部屋の使われ方を教えてください。

渡邉 お酒を飲んで、タバコを吸って、おしゃべりする、それだけですね。冬は鍋をやったりするんですけれど、夏はこの近くの厨房が暑すぎて料理ができないので、鍋をやる機会も減りますし、集まる人も減りますね。1人で使うこともあって、その場合は、みんな本を読むか課題をやっていますね。あと、エアコンがついているので、涼むためだけにやってくる人もいます。なんとなくここにいるっていう人が多いです。昼間とかはみんなで勉強していることが多いかもしれないです。夜は、昔はもっとお酒を飲んでいたんですけれど、みんな禁酒をしてしまって、昔ほど飲んで騒ぐというのはなくなりました。僕はまだ飲んでいるので寂しいですけど(笑)。

——誰がどれくらいここにいますか?

渡邉 常時いるのは僕と医学部の2人くらいで、ほぼ毎日います。この部屋は結構僻地にあるので、他の寮生にとってアクセスが悪いというのもあって、閉鎖的になってしまいますね。

——大人数で使うことはあまりないですか?

渡邉 この部屋のピークの3年前頃には常時5人くらいいたんですが、今は多くの人が卒業してしまったので…盛者必衰ですね。ただ、今も6、7人で集まって飲むのは1、2週間に1回くらい定期的にあります。

——部屋にあるものは使われていますか?

渡邉 結構使っていますね。例えば、押し入れの下にあるヒーターは、冬に出して使いますし、冷蔵庫は、今は壊れてしまっているんですけど、つい最近まで使っていました。 押し入れは、ここを利用する人に人文系がやや多いので、ある種の本棚というか、「本押し入れ」として機能していますね。

——気に入っている/入らないところはありますか?

渡邉 気に入っているのは、ドアを開けると目に飛び込んでくる、壁一面ぶち抜いたみたいな窓がダイナミックなところですね。他には、近くの中学校から聞こえてくる吹奏楽の練習を聞きながら、ここで昼寝するのが好きと言っている人もいましたね。気に入らないのは、ソファ(A)かな。2020年くらいにこの部屋が完成して、そのタイミングで中古のものを持ってきたんですけれど、その年の12月から翌年の1、2月ぐらいに、だんだん凹んできましたね。 それからまた1年ぐらいで、ぐしゃぐしゃになったという感じです。かなり使い勝手が悪いので、いい加減この夏休みにジモティーで良いものをもらいたいなとみんなで話しています。

——タバコを吸わない人がこの部屋にいることはありますか?

渡邉 ありますよ。そういうときにはある種の紳士協定みたいなものがはたらいて、タバコを吸っていいか聞くとか弱煙者と分かっていたら喫煙を控えるとかしています。

——この部屋で食事をすることはありますか?

渡邉 夏以外は定期的にあります。廊下にあるキッチンが使えるくらいの気温になったら、僕はよく自炊するので、少なくとも1週間に1、2回は鍋に限らず料理を作ってここで食べようってなりますね。普段利用している人たちよりも広範囲に声をかけて一緒に食べています。この部屋に居つく人が少なくて、このままだと多分廃屋になってしまうという危機感を持っているので。ちゃんと部屋をまわしていかないと、という感じです。

事務室

——この部屋の使われ方について教えてください。

上原 勉強するなりレポートやるなりっていう、 リビングの延長的な感じです。漫画とかたくさん置いてあるので、暇な時に漫画を読みに来る人もいたり、ちょっと図書館的なところもあります。あとは寮の会議のときに、寮生が全員参加するような会議は食堂とか、そんなに人が集まらない場合は旧印刷室とかを使うんですけど、多くて10人くらいの会議はここでやります。会議にも内々でやるものと公にしていいものとかタイプがあって、公にしていい場合は事務室を使います。また、接客空間的な場所でもあると思っています。寮の接客空間は、食堂と、受付の畳があるところと、この事務室の3つくらいあります。食堂は寮生以外もじゃんじゃん遊びに来て、寮の中では一番パブリックな場所です。受付は、正面玄関の方に来た人を接客できる場所です。ここ事務室はちょっと奥にあって、ソファもあるので、ちゃんとお客さんを呼んだときにお通しするみたいな感じです。あまり寮単位でお客さんを呼ぶことはないんですけど。そもそも吉田寮は冷房のある場所がすごく少なくて。旧印刷室の冷房は全然効かなくて、この部屋と、 受付と、共有スペースみたいになっている新棟の地下、それくらいしか冷房がない。そして私の部屋には冷房がないので、今ここで勉強しています。だから夏以外はあんまり来ません。

——この部屋を使うメンバーは固定で決まっているんですか?

上原 そうですね。普段から使ってるのは私ともう一人くらいなんですけど、時々来るような人もいます。食堂とか受付に比べるとあんまり外から人がふらっと入っては来ないです。たまに元寮生が久しぶりに寮に来るときに、ここで話したりとかはあります。寮の中でもちょっとプライベートな、リビングみたいな場所かなと思います。

——普段使っているお二人はここで何をされているんですか?

上原 私は来週院試なので勉強してますけど、普段はそんなに勉強しないので、全然ここを使わないです。もう一人はゲームばっかりやってます。ボードゲームとか結構あるんで、複数人でゲームをやることはありますね。

——ここで食事をすることはありますか?

上原 みんなで食べることはあんまりないですけど、電子レンジがあるので、ごはん温めてここで食べる人とかいますね。

——冷房があるから来るという人が多いんですかね。

上原 どうなんでしょう。会議以外だと、ここでは1人で過ごす人が多いイメージがあるんですけど、自習室とかと違って人がガンガン出入りするし、普通に喋りかけるし、遊んでいるし、勉強してる人もいる、みたいな感じの場所ですね。

——気に入っている/入らないところはありますか?

上原 本棚で囲われてる感じは好きですけど、そんなに空間が好きで来ているって感じじゃないですね。どっちかっていうと冷房が好きで来ている。あとは大きいテーブルが自分の部屋や他の場所にあんまりなくて、テーブルがあるのは嬉しい(A)。

——最近は毎日この部屋で勉強しているんですか?

上原 ここ1、2か月はそうですね。会議をやっている横で勉強していてもそこは併存して良いというか。寮の厨房の料理作るところと楽器演奏するところが隣接してるみたいな、寮にはそういう場所が多い気がしていて、違った目的のものが同じ場所に共存してることがまあまああると思うんです。だからこそおもしろい出会いがあったりして、それが魅力のひとつな気がしますね。事務室のソファと作業机が隣接してるのも、あんまり他にないと思うんですけど、だからこそ、ここでくつろぐ人間と働く人間が併存するような気がします。

——この棚(B)はどう使われていますか?

上原 郵便物ですね。基本的に誰々宛というポストがあるわけじゃなくて、百何十人分がどさっと入ってくるので、 定期的に仕分けるという形です。

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