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【学び、創造する製図室】まとめ|他大学および京大OB への調査を終えて

2. 世代間の比較

・現在の製図室と異なる点

管理体制と自治

以前は、教員の管理から製図室が独立していた。現在は、教員が管轄して製図室の管理を行っている。

ブースと帰属意識

吉田キャンパスに4回生製図室があった頃は、研究室の枠組みではなく、自由にブースを定めていた。仲の良い人で固まることが多く、属性(入学年度による属性、麻雀等遊びたい人の多い属性、設計に集中したい属性)によって、製図室内に分布が出来ていた。それゆえ、作業の場所なのか、どこかの秘密基地なのか分からないような状態があった。過去は研究室毎の人数制度が設けられなかったため、現在よりも研究室による所属意識が少なかったことが要因だと考えられる。

お手伝いシステムの確立

桂キャンパスへの移動に伴い、現在のような組織体制、系列としてのお手伝いシステムが成立したものと考えられる。吉田キャンパスから手伝いが来ないことを懸念して形成されたと考えられる。

製図室と日常生活

桂キャンパスでは、周囲に学生用の施設がなく、デザインラボ・研究室での生活が主流となっている。一方、過去の吉田キャンパス時代では周囲に学生街が広がっていたため、製図室と周囲の街、そして店で過ごす時間が生活の一部として構成されていた。

設計演習の内容

各時代の建築の捉え方が教育内容、そして製図室に影響を及ぼした。竹山先生のいた時代は、よりアート寄りなカリキュラムであった。現在は、コンピュータによる作業も増え、机の上の風景も大きく変化している。

・現在の製図室と異なる点

机の割り当て

製図室の机を学生で自由に決められる点、1 人1 台の固定席がある点が共通する。現在は研究室毎に机を割り当てることが多くなっているが、学生による選択肢は常に共通している。

学生と教員の距離

普段、教員が製図室に立ち寄ることはあまりなく、管理も学期の始めと終わりが中心である。他大学に比べた際、ある程度学生の自治は保たれている。

編集委員のコメント

山口 現在は、研究室配属で一人一人の受けられる教育量が平等である点は良いなと思った。

杉本 でも、やりたいことを好きなだけ学べていた昔も良いのかもしれない。

寺西 自由だから好きなことを伸ばそうとできるし、研究室の枠があるから競争によって高めあえる部分もあるよね。

寺西 吉田キャンパスは街があるのが良いと思った。桂では、研究室とか校舎の内で別の場所に逃れることは出来るけど、街にも居場所があることでより自由度を増している気がする。

杉本 多様性の面でも昔の方が面白かったよね。周りと同じことをやらなくても良い、何をやっても良いという許容性があるからこそ、自由に自分の好きなことが出来たのかもしれない。

下地 自由な側面は、時代の背景があったのかも。授業に行く、行かないという学校の課題との距離感ももっと自由で、製図室でもやりたいことだけやる、やりたいことしかやらないという雰囲気があったのかもしれない。

千葉 竹山先生の時代では、卒業設計を履修していない人も製図室に入る権利を持っていて、そもそも設計をやる・やらないの自由も製図室内にあったことも許容性に繋がっていたかもしれないね。

千葉 今も吉田キャンパスは3回生製図室と変わっていないような気がする。あそこだからこそのアジト感とか。

酒井 そもそも吉田ってそういう場所性だと思う。学生が占拠して教職員が立ち入れなくなった所が近くにあって、その雰囲気が周囲にも広がっている。あと綺麗すぎない感じとか。

谷口 もちろん壁では囲われているけれど、夜ご飯の時に人数が減ったり、コンビニで買ったものを持ち込んだり、街の雰囲気が製図室に持ち込まれているのも、吉田キャンパスの大きな特徴だと思う。

長谷川 ところで、製図室を用意する場所として考えるのは難しいよね。どのような場である以上に、どのような仲間とどのように関われるのかがより大事なのかも知れない。パソコンさえあれば良ければ、場所というものにこだわる必要はなくなるけど、製図室という名目で用意されているだけで実際はその場所が違う意味になっている気がする。

寺西 どうしてもパソコン上だと、集まることと一人で作業を行うことの切り替えが難しい。実際に集まって、自分がリフレッシュしたい、話を聞きたいとなった時に、「自分で行動を起こしてその場に行く」ということ自体が頭に刺激を与えていて、そのことが製図室の本当の意味かもしれないね。

各大学、各世代を振り返って

製図室という同じ用途にも関わらず、大学・世代毎によって製図室の空間性・自治の形・行動特性は異なる。それは、出入りする人の属性・カリキュラム内容・管理の形による部分だけでなく、学校・時代・キャンパス毎の雰囲気も製図室の特徴に大きく関係している。その中で、京大では時系列の中で、系列文化という独特のお手伝いシステムが誕生したことが明らかとなった。そして今回調査した全大学に共通し、学生はコロナ禍を経てもう一度製図室に集まり、日々創造に励む場が形成されている。

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