【神吉研究室】Project of Kanki Lab
―きよやまちやをめぐる縁
修士課程4回生 久保田匠慶
今、僕は研究の為にニューヨークを訪れている。ブルックリンの工場や倉庫の利活用を調べ歩く中で、前々回の渡米から帰国した時のことをふと思い出した。
2017年3月、研究室にNY土産を持っていった帰り、ひょんなことから同期の清山の住む「きよやまちや」でのパーティに飛び入り参加した。その縁から、度々この町家で行われるイベントに足を運ぶようになった。1年後、留学前半年間の住まいに困っていた折、空いていた離れに住まわせてもらうこととなった。そして留学後の現在も離れに暮らしている。
庭の掃除や共通の友人の訪問時以外は各自で自由に暮らす、淡白な共同生活であるが、常にお互いの在非は感じられる透明性がある。ミセの間の扉を開け放し、通りの喧騒を感じながら過ごすのが心地良いため、在宅時は大抵ここにいる。しばしば、清山と歓談するのもここだ。
この町家で出会った友人が結婚した際には、皆でミセの間でお祝いをした。「きよやまちや」を積極的に開いていこうとする家主の気構え1)がこのような不思議な縁を紡ぐのであろう。ミセの間よろしく、元倉庫であるカフェの大きく開かれたシャッター越しに街を眺めながらそんなことを考え、ここで筆を擱くことにする。
1) 清山陽平「現代(いま)、町家に住むということ」traverse17 2016.10