災害・仮すまい考|牧紀男
― 復興住宅としての応急仮設住宅
「応急仮設住宅利用の長期化」という課題が発生することが、応急仮設住宅という課題を考える際の特殊性を示している。応急仮設住宅での生活が長期化するのは、復興公営住宅が完成しない、高台の宅地の造成が終わらないといった応急仮設住宅以外の要因によるものである。応急仮設住宅だけで入居期間の長期化という課題に対応しようとすると、住性能を上げるということになるが、それはコスト増につながる。どうも「良い仮設住宅」という命題自体が間違っているようである。
なぜ「良い仮設住宅」という命題はおかしいのか、というと、災害復興の目標は生活再建である。さらに突き詰めると、大きな地震に見舞われても被害を受けないことである。したがって、仮設住宅での生活はできるだけ短い方が良いし、短期しか使わないものの居住性能を上げるということはナンセンスである。また、本来的には災害前に耐震改修して家が壊れないようにするのが一番である。このように防災対策は全てが関連を持っており、仮設住宅をなんとかすれば解決できるという問題ではない。すなわち、建築学会の「東日本大震災復旧復興地域まちづくりのための提言」8 がまとめたように、「「災害救助法」(注)、「建築基準法」等法的枠組みとも関連するが被災者の生活再建、復興まちづくりを総合的に、迅速かつ効果的に行う一貫する体制の構築を目指す必要がある」<注:事業仮設住宅との二重仮設住宅問題、復興事業との関係、復興住宅への転用の問題(建築基準法との整合)、空地の取り合い(仮設住宅、災害復興住宅、瓦礫置場)の問題を整理解決するためには所管省庁の一本化も検討されるべきと考える>ということが応急仮設住宅という問題を解く上で重要なのである。
今後の応急仮設住宅については「借り上げ仮設」が中心になると考えられる。ただし、高齢者等の支援が必要な人については、借り上げ仮設に住むことで十分な支援が受けられない等の問題が発生しており、集まって住む・支援を行いやすい形式での居住が求められる。新たに建設する応急仮設住宅については災害救助の枠組みではなく復興対策の第一歩と考え、長期的な利用にも耐える半公営住宅的な位置づけとする必要がある。雲仙普賢岳の噴火災害では、応急仮設住宅での生活が長期化することから災害復興公営住宅が住宅再建までのつなぎの住宅として利用された事例も存在する。また1953 年紀州大水害の仮設住宅が現在まで使われているという事例9 も報告されている。
応急仮設住宅を長期的に利用可能にし、復興の第一歩として位置づける、というアイディアに対して、総論としては良いことだ、という反応が多い。しかし、課題となるのは、災害救助法の応急仮設住宅は「救助」という位置づけのため国の全額負担になるが、復興のための住宅となった場合、ある程度の負担が求められるということが課題として残されている。こういった実施に向けた課題を解決していくということが今後の防災研究としての応急住宅研究に求められる課題である。
(本稿は、牧紀男、仮設住宅の経緯と将来、東日本大震災4 周年記念シンポジウム、日本建築学会、2014 を大幅に加筆・修正をしたものである)