【竹山研究室】ダイアグラムによる建築の構想

「イメージ・カタチ・言葉・プログラムを結び、
空間を暗示・示唆するダイアグラムを通し建築を構想する」

ダイアグラムは建築を取りまく社会・制度や土地の環境、機能を成立させるシステムや構造、空間構成にいたるまで、それらを抽象化し、ときに省略し、図式的関係として表現する。建築を成り立たせる構造を明るみにすることによって、建築を雄弁に説明する。

しかし、私たちはこうした単なる図解ではないダイアグラムを探求し始めた。まずピーター・アイゼンマンの『DIAGRAM DIARIES』を手がかりとして、「生成装置」としてのダイアグラムについて議論した。建築の構想において考慮すべき幾多の問題や必然的に存在するコンテクスト、さらには幾何学といった設計の根拠を一度捨て去り、ダイアグラムによって建築を生成する。これが私たちの課題となった。

線で描画される図式に自ずと内包される設計者の恣意的な意図を排除するべく、手で描くことを放棄せねばならないという意識を共有しながら、私たちは試行錯誤を繰り返した。

そうした中で、ある学生が持ち寄った数枚のイメージがスタジオを思わぬ方向へ推し進める。彼は味噌汁でも作るかのように豆腐を刻み、形を崩さぬよう持ち上げると、机に敷いた黒板の上から自由落下させた。当然のように崩れた豆腐を写した写真には、言葉では記述することのできない豆腐の物性が表象していた。
だからといって形態に崩壊の偶然性を取り込もうとするのではなく、あるいは「豆腐が崩れたような形」をそのまま具現化するのでもない。私たちは、イメージに表れたある現象を成立させている内なる構造、あるいはものの原理の中に、まったく新しいダイアグラムの展開を予感していた。

私たちは議論の末、各々の手によってイメージを生成することを試みた。

トマトを切断する、映画のシーンをキャプチャーし重ねあわせる、氷が溶ける様子を観察する…。全員で20 以上の試みがなされ、それらは二次元の画像として持ち寄られた。さらに学生たちは互いのオリジナルなイメージを交換し合った。これもまた、恣意性を取り除くためのプロセスである。

かくして、他者によって生成された一枚のイメージと、同様の手続きによって交換された敷地のみが、自分のプロジェクトの手がかりとして残ったのである。

その後、各々が与えられたイメージを観察し、物質や現象に潜在する構造や原理を独自の手法によって抽出しようと試みる。同時に、二次元の画像が三次元の形へと変換されていく。

一枚のイメージは二人の学生で共有されたため、自ずと互いの手法に差異が生じてくる。しかし、差異を生じたそのプロセス全体が、最後にはダイアグラムとなって表れたのである。「生成装置」としてのダイアグラムを如何にして獲得するか、一つの実験的試みである。( 文・西尾)

 

■IMAGING DIAGRAM

​私たちが参照したイメージ、「生成」したイメージを辿ってみる。

 

■WORDING DIAGRAM

私たちが参照したイメージ、「生成」したイメージを辿ってみる。

 

■WORKS

01. 今村はるか​

 

02. 高野香織

 

03. 西川 平祐

 

04. 鈴木 綾

 

05. 長谷川 睦乃

 

06. 阿波野 太朗

 

07. 山田 鉄馬

 

08. 西尾 圭悟

 

09. 嶌岡 耕平

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