【学び、創造する製図室】製図室調査①京都大学|個が響き合う場
インタビュイー:上田さん(京都大学大学院修士一回生)
聞き手:千葉祐希、森田健斗
2023.10.01 京都大学桂キャンパスにて
大学について
――人数構成を教えてください。
工学部建築学科は、1学年80人で、二回生までは全員が設計演習を履修、三回生からは選択制となり30~50人程度が履修します。卒業設計は、20~30人程度が取り組みます。
――カリキュラムと製図室について伺います。
四回生になると各自研究室に配属され、吉田キャンパスから桂キャンパスに拠点が移ります。四回前期には各研究室で設定されるスタジオ課題を履修し、後期に卒業設計に取り組みます。四回生は一年を通じてデザインラボ(通称ラボ)を拠点とし、設計活動を行います。
――設計課題はどのようなものですか。
一回生ではドローイング・CG・模型のスキルを身に付け、二回生から本格的な設計課題が始まります。四回生の講評会では、建築学科の入る棟の1階エントランスと各階エレベーターホールに成果物を展示します。横幅2m以上の長さが取れるので、模型やプレゼンテーションボードは大きいものが多いです。また、学期末には各課題から選抜された作品が集う、全学年合同の講評会である「VERTICAL REVIEW」が吉田キャンパスで実施されます。
製図室について
──製図室(デザインラボ)の管理について伺います。
学生からデザインラボの管理を主導するラボ委員を4名決定します。主に普段のゴミ捨て・清掃のスケジュールを決め、年度末の大掃除を取り仕切ります。また、製図室の管理にとどまらず、講評会での発表時間を先生と相談しながら決め、展示計画も学生主導で行います。デザインラボの管理や運営については代々引き継がれているものを参考に、毎年更新をしています。
──ゴミ捨てはどのようにして行われていますか。
研究室ごとに週替わりで清掃・ゴミ捨てを行っています。模型材料などゴミの分別では曖昧なものが多く、分別のやり直しが命じられて戻ってくることも多々あります。
──大掃除について詳しく教えてください。
年度末に、次の学年に引き渡すために荷物を撤去する大掃除を行います。棚や模型材料、道具、プリンターなどは後輩に引き継ぐこともあり、特殊なものが引き継がれた場合には、話題になります。新年度の最初には、2学年が集まりデザインラボの物・運営方法の引き継ぎが行われます。
──印刷はどのようにしていますか。
基本的には各研究室で行います。ほとんどの研究室に大判プリンターがありますが、紙やインクの管理は研究室ごとに異なります。A3以下のサイズの印刷では、先輩から引き継いだプリンターなどを自分の席で使う学生もいます。
──学生間の交流について教えてください。
デザインラボは、基本的には四回生が利用する部屋なのですが、レーザーカッターやShopBot などの共用設備もあり、他学年の人も利用します。また、課題提出前にはお手伝いの後輩やTA(Teaching Assistant)、研究室の先輩が相談に訪れることも多々あります。学年を跨いだ関わりも多い場所であるため、自分のお手伝いの後輩だけでなく、研究室同期のお手伝いの方とも仲良くなる機会があります。
──製図室での生活について伺います。
桂キャンパスの周囲に下宿する人がほとんどを占めますが、実家から通う人、三回生までを過ごした吉田キャンパス付近に住む人も一定数います。桂キャンパスは山の中腹にあり、キャンパスの付近よりも、最寄り駅の近くに住んでいる学生が多いです。最寄り駅までは4~5kmほどあり、バスか原付、バイク、電動自転車などで通う人が多い印象です。ラボ自体は24時間空いていますが、最寄り駅までの最終バスが10時半頃で、それ以降の時間ではデザインラボの人数が減ります。
──周辺の環境について伺います。
徒歩圏内にはコンビニや飲食店がなく、食事は学食や生協のショップで済ませますが、日・祝は開きません。保存食品を常備する人、出前を頼む人がいますが、出前は付近の中華料理店のみ対応してくれます。提出の直前期には、そのお店にまとめて30~40食注文することもあります。
──製図室の空間づくりについて教えてください。
年度の初めに席を決め、研究室ごとにブースを作るように机や、先輩から引き継いだ棚を配置します。1年の間にどんどん荷物が増え、それぞれのブースに個性が出てきます。卒業設計の期間ではお手伝いの後輩が来て、一気に模型が増えるため部屋が狭くなります。それに応じて一部の学生が研究室で作業をすることになり、レイアウトも適宜変更されます。