【学び、創造する製図室】製図室調査②|” 創住近接 ” の場

インタビュイー:金子さん( 京都工芸繊維大学大学院建築学専攻修士一回生)

聞き手:上田瑛藍, 下地杏花, 杉本春佳, 谷口颯一郎, 千葉祐希

2023.10.12 京都工芸繊維大学松ヶ崎キャンパスにて

大学について

──人数構成について伺います。

学年の構成は、デザイン課題コースと建築課題コースが合わさったデザイン・建築学課程(通称デザ建)として入学し、一回生の後期でそれぞれのコースに分かれます。一学年150 ~160 人中、デザイン課題コースが50人、建築課題コースが100人くらいになっていきます。

──建物について教えてください。

建築学科のこの建物自体は新しくはないのですが、数年前にリノベーションされ、すごく綺麗な校舎になっています。机や棚なども京都工芸繊維大学(以下工繊とする)の先生方がデザインされていて使いやすいです。学年が上がるごとに家具のグレードが上がっているように感じます。

──カリキュラムと製図室はどのようなものですか。

デザ建は、デザイン系と建築系が一体となっていますので、製図室ではなく実習室と呼んでいます。一回生の前期はデザイン課題コースと建築課題コースが合同で課題を行い、後期からはコースに分かれていく形になります。なので、実習室は前期は2つのコースが合同の名簿順で5部屋の実習室を使い、後期からはそれぞれ部屋が分かれます。後期はデザイン課題コースに2部屋、建築課題コースに3部屋が与えられ、席順は名簿順になります。研究室に配属される三回生の後期以降は、部屋割りや席順が研究室ごとに固まるようになります。デザイン課題コースは分からないのですが、建築課題コースは設計・歴史・計画・設備・構造の研究室が4つの部屋に分けられ、席も研究室で固められます。席の環境はこれらの分野に関係なく一律ですね。四回生は3つの実習室が与えられます。グループ分けは同様に研究室ごとで、一人につき1席が与えられている感じですね。研究室の中に席を与えられるのは修士になってからなので、学部では実習室で作業をするのが基本になります。

──設計課題はどのようなものですか。

一回生の課題はドローイングが多かった印象があります。一回生の部屋は製図台と椅子と棚が一人1つずつ与えられます。1台では作業スペースが足りないこともあり、各自の棚を動かして机に転用する光景がよくみられます。今は後期が始まったばかりなのもあって、あまり物はないですが、もう少し増えてくるとそうなっていくと思います。また、ソフトや模型等は授業で学ぶというより、学生間で協力しながら学んでいますね。先輩か、先輩から教わったりした同期に教えてもらうような形で身に付けています。

──では、卒業設計は?

夏休みが院試期間なので、卒業設計は夏休みが明けてから本格始動という感じです。前期は研究室ごとにゼミ活動をしながら徐々に卒業設計を行っていきます。卒業設計は前期からやるのですが、やはり院試との両立が難しく、後期から本腰を入れる人が多いです。工繊は提出が1月の2週目でめちゃくちゃ早いので、かなりかつかつのスケジュールですね。卒業設計は指導教員と相談のもとで、各自が設計か論文を選ぶことになりますが、設計系の人はほぼ全員が設計を選んでいます。

── KYOTO Design Lab デザインファクトリーについて教えてください。

KYOTO Design Lab デザインファクトリー(以下D-Lab)は、デジタルファブリケーション機器全般を使える施設です。レーザーカッターや3D プリンター、3D 点群データを使った3Dモデル化、データ処理系、など様々な機器に対応しています。デザイン・建築学課程だけでなく、大学の他の課程の人も使える施設で、講習を受けて修了書を取得すれば誰でも利用可能です。2階はミーティングスペースのようになっていてすごく居心地がいいです。外部の人が来たときによく使われている印象です。D-Lab はデザイン・建築学課程と管轄が違うので、専用の職員さんが管理や運営を行っています。

D-Lab の入口

製図室(実習室)について

──実習室の管理について伺います。

実習室の管理は学生が主体で行っています。実習室の管理係などのきちんとした役割は無く、部屋ごとにみんなで主体的に管理しているような感じです。

──ゴミ捨てと清掃は?

専用のゴミ袋に入れて、処分日に自ら処理場に持っていくのが基本です。学生が主体的に行います。あとうちでは学期末に掃除日というものが指定されていて、その日にみんなで大掃除を行います。指定された日以外では、課題後などに学生で主体的に行います。

──印刷はどうしていますか。

印刷室は、全員が利用できる大学管理の印刷室と研究室のプリンターが置いてある印刷室の2つがあります。大学管理の方は職員さんが厳重に管理していて、利用時間の制限があり朝から夕方までしか使えないのですが、研究室管理の方は制限はありません。なので日中は大学管理の方を利用し、大学管理の方が閉まっている夜中は、研究室管理の印刷室を使うことが多いですね。メンテナンスは担当の職員の方がいて、修理や点検をしてくれたりします。予約とかは特にいらなくて、自分で紙を持ち込む形式です。

──学生間や先生方との関わり・交流についてお聞きします。

先生とのエスキスは先生が場所を決めて行う形で、実習室以外がエスキスの場になることが多いですね。京大のTA(Teaching Assistant)チェックのようなシステムもないので、実習室に上回生の学生が入るということもあまりないです。講評会の場所も同様で、先生が場所を決めます。また学生間の交流についてですが、同学年との交流は一回生から部屋単位でコミュニティができてきて、サークルや研究室配属だったり色々なきっかけがあってだんだんと部屋を超えて、交流の輪が広がっていきます。学年を超えたつながりについては、研究室に配属されるまでは上回生が実習室に来ることなどもあまりないのですが、建築系サークルの活動などを通して交流がありました。研究室に所属してからは直属の先輩ができるので、そこでの関係が生まれ、縦のつながりもより増えるように感じます。卒業設計の時も京大でいうお手伝い系列みたいなシステムは無いです。卒業設計を手伝ってもらう場合は、基本は個人づてでお願いしています。

──実習室での生活について伺います。

まず、僕らの代では実家住みがあまりいなくて下宿生が大半です。京都という地理特性上、大学から自転車で5分で通えるくらいの範囲に多くの人が下宿をします。すぐに下宿先に帰ることができるので、課題が佳境を迎えるときでも、実習室が寝る場所になったり住みつくようなことはあまりないです。食事に関しては家に帰って自炊するか、一乗寺でラーメンを食べるか、コンビニで買ってきて給湯器を使うなどして済ませています。

──周辺の環境はどのようなものですか。

徒歩5分のところには高野川があるので、作業の気分転換をしたくなると何人かで散歩に行ったりします。課題終わりにそこに行って、みんなで軽い打ち上げをするなんてこともよくあります。

──画材はどうしていますか?

画材は大学内に生協があって、大体のものはそこで売ってます。工繊の生協には、意外とそういうデザイン系の細かい材でも売ってるんですよね。敷地模型などに使う段ボールやスタイロなどもかなり大きなサイズまであります。もしなかったら、近くの画材屋さんまで行くっていう感じですね。

──実習室の空間づくりのお話をお願いします。

僕らは、自分たちの場所をまずは自分たちでつくってみる、という土壌があるように感じます。棚くらいだったらつくっちゃいます。それには、D-Lab の存在が大きいですね。それを後輩たちが受け継ぐこともあり、実習室には自作のものや、先輩から受け継がれてきたものがあります。

──コンセントはありますか。

コンセントは各自の席にはなくて、部屋の角の方にいくつかあります。パソコンを使う時は、コンセントに近い友達の席に集まることが多いです。四回生ぐらいになるとデスクトップやモニターとかを設置し始めるようになり、延長コードを駆使して自分の席に伸ばす傾向にあります。

──修士の活動はどのように行われていますか?

設計系では各研究室ごとの部屋というものは今はなくて、修士の設計系研究室所属の学生に向けて院生室という大きな部屋が2つ用意されています。この2部屋に8研究室の修士学生が80人ほどいる感じです。実は去年までは研究室ごとに部屋があったんですけど、去年の秋ごろ現状に変わりました。中の様子としては、個人デスクが一人一台ずつ割り当てられていて、修士になると学年は問わず研究室ごとに固まります。基本的にはそこで作業するんですが、修士になると(模型が大きくなったりするので)一台では収まらないこともあって、別で模型室も割り当てられています。なので、院生室でデスクでできる作業やパソコン作業をして、模型室で模型作業をするというふうな使い分けをしています。

──研究室の集まりについて教えてください。

ミーティング時は、先生の部屋や修士の院生室の中央デスク、また各自で大学の部屋を予約したりしています。

 

──最後に、コロナ禍では実習室はどのように開かれていましたか?

コロナ禍の実習室は、利用時間に制限がありました。初めの方は、利用禁止、次に17時まで、20時まで、そんな感じでだんだんと緩和されていきました。17時までの頃は、僕は当時二回生だったので昼間は授業が多く、実質実習室はあまり使えませんでした。その期間は家で模型や製図などの作業をしていました。他の人も同じ感じだったと思います。また講評会や先生とのエスキスについてですが、コロナが本格的に流行った時期はオンラインでした。その後は、エスキスはオンラインで講評会は選抜者のみ対面、エスキスはオンラインで講評会は全員対面、エスキスも講評会も対面、と少しづつ本来の形に戻っていきました。

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