「アーキテクチャーフォト®」編集長/後藤連平|今、建築をいかに伝えるか
聞き手:三嶋伸彦、齋藤桂、三田沙也乃、小久保舞香
2021.8.14 於 オンライン会議(ZOOM)
古くから建築家は自身の作品や思想を発信し、新たな仕事に繋げる手段としてメディアを活用した。メディアはいわば建築を「包むもの」であり、その情報が今や無数に私たちを「取り巻いて」いる。建築と社会の関係を視覚化するメディア「アーキテクチャーフォト®」を運営し、日々建築情報を発信する後藤連平氏。
情報化が進み、建築と社会の関係が移り変わりつつある今、建築活動を発信する目的は何か。氾濫している情報を私たちはどのように受け取るべきか。建築を取り巻く社会の変化のなかで、ウェブメディアの一つのあり方としての後藤氏の取り組みに迫る。
アカデミックとビジネスの両面で建築を経験する
ーー後藤さんがアーキテクチャーフォトを立ち上げるまでのこれまでの活動について教えてください。
生まれは静岡県磐田市です。高校生時代からファッションやデザインに関心があり、その流れのなかでプロダクトデザインを大学で専攻したいと思うようになり、京都工芸繊維大学(以下、工繊大)に入学しました。今は分かりませんが、当時国立大学でプロダクトデザインを学べる学校は、工繊大と千葉大学の2 校しか無かったんです。
工繊大は当時、造形工学科という学科の中にプロダクトデザインを学ぶ意匠コースと、建築を学ぶ建築コースがありました。そして一年生時には全員が基礎的なデザインの課題に取組み、二年生になった時に、意匠に進むか建築に進むかを決めるという仕組みをとっていました。どちらに進むかは、とても迷ったのですが、様々な建築家が椅子のデザインを手掛けていることを知り、建築設計に進めばプロダクトの分野もカバーできるのではないかと思い、建築コースに飛び込みました。
三年生の後期からゼミに配属されるのですが、もともと建築設計だけではなく、建築の周辺領域のクリエーションにも興味があったこともあり、エルウィン・ビライ先生の研究室を志望しました。ビライ先生は、1990年代当時『a+u』のエディトリアル・アソシエイトをされていて、ピーター・ズントーの作品集やヘルツォーグ&ド・ムーロンの作品集などもビライ先生の仕事です。また、大学院では古山正雄先生の研究室に入り、形態分析や建築批評などを学びました。古山先生は『壁の探求』などの書籍で、安藤忠雄さんを理論面で支援した批評家として知られていました。
卒業してからは、東京の組織設計事務所に就職しました。建築雑誌の出版社など、メディアの道も頭に浮かんだのですが、建築の実務を経験しなければという思いが強かったんです。当時はもし出版社等で編集の仕事をするにしても、建築実務の世界を知っていないと作品に深く迫れないのではないかと思い込んでいて。
組織設計事務所では、分譲集合住宅の設計部署に配属されました。そこは大学院での研究の世界とは真逆の世界で、ショックを受けました。分譲集合住宅は、最初から商品として「何千万円で売ること」が前提となっているビルディングタイプなんです。大学院のようなアカデミックな場で考えていた意義的な建築を追い求めるのではなく、いかにお金を払ってもらえるか、利益を最大化できるか、いかに短い時間で建築をつくるかが求められているんです。
でも、今から考えると社会というものを知るすごくいい経験だったなと感じています。学生時代、特に意匠系にいると、建築を自分がつくり出した「作品」の側面のみで考えてしまうのですが、マンション設計などに関わると、痛烈に建築の「商品」の側面を意識させられるんです。商品として考えると、独創的な計画を立てたとしても、それがもし買ってもらえないと意味無いですよね。そうなると、ディベロッパーも赤字になって、次から仕事がこなくなります。そういう、建築を「商品」として、ビジネスとして設計をする、ということをそこで実感させられました。
そのあと、地元にある設計事務所で働きました。ここでは、木造住宅や耐震補強などの仕事をしていて、組織設計にいた時にはあまり感じなかった、設計の仕事でお金を稼ぐということの意味を実感しました。組織の規模が小さいとお金の流れがよく分かるんです。組織設計は、営業部、設計部、構造部などに分かれていて、さらに基本的に大きなビルディングタイプを扱うので、なかなかお金の流れが見えてこないんです。
このような経験の中で、設計事務所が「どうやったらこの社会の中で生き残っていけるか」という視点が僕の中で芽生えだしました。
建築を発信することの可能性
ーーネットでの発信活動はいつから始められたのでしょうか。
ウェブでの発信活動は大学院の時からずっと続けていました。最初に見よう見まねで立ち上げたのは、自身の学生時代の作品を中心に掲載するウェブサイトです。ただ、既にそこで、訪問した建築の紹介や展覧会のレポートなども行っていたんです。その後、より閲覧してもらえるように考えて改良を加えたのが、自分がヨーロッパに行った際に撮ってきた著名建築の写真などをアップするウェブサイトです。これをさらに改良して現在の建築メディアのスタイルになっていくのですが、当時はそれが仕事になるなんてことは考えてもいませんでした。
ただ、ずっと発信したいという気持ちはあって、社会に出てからも設計の仕事と同時並行でウェブを使っての発信を行っていました。例えば、昼間会社でマンションの設計をして、仕事から帰ってきて、夜にウェブサイトの更新や発信をするみたいな。半ば趣味的にですが、ずっと続けていました。
2007 年に「アーキテクチャーフォト」という名前にあらためて、“ 建築と社会の関係を視覚化するメディア” として発信活動を始めました。アーキテクチャーフォトの認知が高まるにつれてだんだんとその比重が増していきました。浜松にいる時からアーキテクチャーフォトの業務に本腰を入れはじめていましたが、本格的にメディアとして活動したいと、2018 年に東京に引っ越してきて、今に至ります。一つのことに専念していたというより、設計の仕事をしながら、並行してネットの発信をしていた点が独特かなと思います。
ーー建築を学ぶ一般的な学生とは興味の方向性が大きく違いますね。設計コンペに応募したり、研究に没頭していたり、というのがメジャーなイメージなのですが。
そうですね。大学院では同級生の多くが建築のアイデアコンペに応募していました。でも、僕はそれに対しては何故かモチベーションが沸かなくて。もちろん、建築家になるためには設計コンペで受賞歴を重ねていくことが大事だとは分かっていたのですが、それをやるよりも、見に行った建物の写真と感想を自分のサイトにアップして、アクセス解析を見て何人が見てくれたという反応の方が面白くてやめられませんでした(笑)。一個人が部屋の中でつくったコンテンツを世界中の人に届けることができる。そんなところにインターネットの面白さと可能性を感じていました。
ーー建築の情報発信をするにあたって、影響を受けたものはありますか。何かきっかけがあったのでしょうか。
現在、武蔵野美術大学の教授をされている菊地宏さんという建築家の方に影響を受けました。その方は僕よりも年上ですが、学生時代から自分のウェブサイトをもっていて、ヨーロッパに建築旅行に行った時の写真や学生時代の作品を載せていました。それがすごく面白くて、印象的でした。
その時はまだ、僕も独立して建築家になりたいと思っていましたが、直観的に、自分が独立する頃には、インターネットで自分の仕事を発信する時代がくるんだろうなと思ったんです。当時はウェブデザイナーのような仕事が確立していなかったので、独立した時にまずは自分でホームページがつくれないといけないのではと思いました。
レンタルサーバーを借りて、Dreamweaver というウェブデザインをビジュアルで行うことができるソフトを使って自分のサイトをつくりレンタルサーバーにアップしたんです。その過程は、すごく楽しくて、可能性を感じた瞬間でした。
それだけネットに面白みを感じて魅了されたのは、2000 年前後という時代が、インターネットの黎明期だったからだと思います。生まれた時からインターネットやスマートフォンがあって、物心つく時から持っていたら、当たり前すぎて、可能性も何も感じないのではないでしょうか。
インターネットの世界に魅了される
ーー学生時代のご友人のなかで、インターネット活動を一緒に始めたり、教えてくれたりした方はいらっしゃったんですか。
周りにはあまりいなかったんですけど、同時期にネットの面白さに気付いていて発信していた建築学生は日本全国に何人かいました。当たり前ですが、ネットの良さって、距離が離れていても、同じことに面白みを感じている仲間がいることを感じられるところですよね。
そういう人たちが立ち上げたブログやサイトを見つつ、自分も更新していました。彼らとも交流はありました。Twitter のようなリアルタイムでインタラクティブな仕組みではないのですが、BBS(電子掲示板、Bulletin Board System の略)という仕組みがあったんですね。BBS を自分のサイトに設置すると、そこに訪問してくれた人が感想を書いてくれて、それに対してコメントができる仕組みになっていて、その中でやり取りしていました。
ーー発信を始めた当初からサイトの閲覧者数は多かったのですか。その数が一気に増えたタイミングのようなものはありましたか。
意外にも、立ち上がりの当初から見てくれる人はいました。というのも、その当時はウェブサイトの数が圧倒的に少なかったんです。あと現在では当たり前の、Google のワード検索からサイトにアクセスするという仕組みも一般化していませんでした。
当時はYahoo !のディレクトリ型の「Yahoo !カテゴリ」というものがあって、申請して審査に通過すると、リストに登録されるんです。そして、建築カテゴリだとこういうサイトがあるよと Yahoo !のページに掲載されるので、多くの人がそこから様々なウェブサイトにアクセスしていました。そこに運よく登録されたこともあり、ビュー数はゼロではなかったです。
もう少しあとの話ですが、こんなこともありました。地元に藤森照信さんの「ねむの木こども美術館」が出来た時、見学に行って公道から外観の写真を撮って、雑誌に出る前にサイトに載せていたんです。そうしたら突然イタリアの出版社「domus」から、フィーを払うから写真を撮ってきてくれないかという依頼のメールがきたんです。
僕のことを建築写真家だと思ったようですね。それもウェブサイトが少なかったからこその出来事だったんだと思います。今であればプロの写真家みんなが自身のサイトをもっているので、依頼先はすぐに見つかると思うんです。初めての経験なのでやり方も分かりませんでしたが、藤森さんと学園に許可をいただき撮影を行いました。デジタルカメラも普及していなかったので、35mm のポジフィルムで数百枚撮影したものをイタリアまで送りました。現像するまでしっかり撮れているか分からないので、その夜は眠れなかったことを憶えています(笑)。実際に誌面に写真が使われたのを見た時は嬉しかったですね。
そういう意味ではウェブでの発信を始めるには幸運な時代だったと感じます。
いろいろな経験をするなかで、自分が書いたものや選んできた情報が世界中に発信されて届いていることを実感しました。今振り返っても、僕は自身が発信したものを見てもらうことにすごく喜びを感じる人間だったんだろうなと思います。
生き残る確率を上げるために
ーー2003 年にサイトを始めてからずっと設計の仕事と並行してウェブの活動をされていて、その後完全にシフトしたという流れですが、どのような判断があって専業になられたのでしょうか。
もちろん収益的な面でも、次第に得られる収入のバランスが変わってきたという側面もあるんですけど、一番大きかったのは、ふと10 年後の自分を想像したとき「どうしたら生き残れるか」を考えたところでしょうか。
当時、僕は静岡県浜松市に住んでいて、そこを拠点にメディアの活動をしていたら10 年後生き残っていない気がしたんです。様々な変化があるなかで、作品を掲載させてくれる建築家も、ジョブボードに掲載依頼をしてくれる設計事務所も首都圏に集まっていました。ずっと行ってきたメールだけのコミュニケーションではなく、直接会ってお話しして関係性を深めていくことによって、10 年後僕自身が建築の世界で生き残っている確率が上がるだろうという直感がありました。それで東京に拠点を移し、メディアとしての活動を展開しようと思いました。
ーーアーキテクチャーフォトを始めた当初は、旅行で撮影した建築写真を載せる媒体だったとお聞きしましたが、現在では建築情報のキュレーターのような役割や、建築作品を載せていくことがメインコンテンツになっていますよね。サイトの運営方針やメインコンテンツはどのように移り変わっていったのでしょうか。どこかにターニングポイントのようなものがあったのでしょうか。
コンテンツの変化に大きなターニングポイントのようなものは無くて、結構緩やかに変わっていったような気がします。2007 年にアーキテクチャーフォトという形になった時には、SNS が普及していなかったし、建築家が第三者のメディアサイトで作品を発表するということもまだ一般化していない時代だったんです。そんな何もない時代に始めて、建築家がネット上に作品を発表する仕組みと習慣をつくってきたんです。
2007 年から数年間は、アーキテクチャーフォトでは著名建築家の設計した建築写真が掲載されているウェブページをいち早く紹介していて、紙媒体に載る前の作品が、すごく早く紹介されているサイトとして認知されていたと思います。でも、そのあと、SNS が普及したことによってスピードはSNS に取られちゃったんです。
例えば、ある建築家がコンペで勝ったとします。そして自治体や主催者側がこのタイミングで公開していいよっていうことを建築家の方に伝えて、その最善のタイミングでこのコンペに勝利しましたという感じでSNS に投稿しますよね。そう考えると、第三者が情報発信でその速度を上回ることはほぼ不可能なんですよね。
そこで、あらためて自分にできることってなんだろうって考えました。
今は、膨大な建築を見てきた経験や、実務の現場で得た感覚を生かして、建築家の皆さんのそれぞれの作品のなかにある固有の良さを編集視点と技術で引き出すことに務めています。加えて様々なウェブサービスを用いることで、個人で発信しているよりも作品を遠くに届けられる、ということがアーキテクチャーフォト独自の強みになっています。
アーキテクチャーフォトを情報収集源にしているマスメディアも多いようで、掲載作品がその後テレビに取り上げられるなどの話もよく聞きます。
社会や価値観の変化、その状況に応じて自分がもつスキルでやれることをやって、生き残ってきたという感じです。だからたぶんこの先も何らかの形でやることは変わっていくんだと思います。
ーーアーキテクチャーフォトは、収益面ではどのように運営されているのでしょうか。
多くの試行錯誤をしてきたと思います。最初はGoogleアドセンスという、サイト内に設置した広告がクリックされるとお金が発生するシステムを活用していましたが、これはアーキテクチャーフォトのようなリピーターの多いサイトには向かない仕組みだと分かり、うまくいきませんでした。
次にオンラインショップをつくったんです。初めは、古物商の許可を得て建築の古書を販売していました。これはとても楽しくやりがいもあったのですが、更新作業や発送作業に割く時間が大きくて、メディア運営との両立が難しいことが分かりました。
ならば量産品ならどうかと考え、オリジナルのバッグをつくって販売しました。拠点としていた浜松は繊維産業のまちで、製造してくれる会社も見つかりやすかったですし、もともとファッション分野にも興味をもっていたので、無理なく始められました。こちらも10 年くらいいろいろと試行錯誤をするなかで「アーキテクツバッグ®」というプロダクトの開発に至りました。この名前で商標も取得し現在も販売しています。今累計で数千個売れているので、収益の柱の一つになっています。
このようにいろいろ試していくなかで、先ほども出てきた「アーキテクチャーフォト・ジョブボード」という建築系の求人掲載サイトも始めました。開始して今年で約10年になります。これも収益の柱になっていきました。当時、大手事務所や組織設計はリクナビなどの求人サイトを活用していましたが、アトリエ設計事務所が求人情報を広く発信する習慣や場所は全く無かったと思います。そういう何もないところに道をつくってきたんです。
アーキテクチャーフォトというメディアに影響力があったこともあり、お金を払ってでも出してみようという方が運よく居てくださいました。加えて今は、企業の広告案件も増えています。建築設計者にアピールしたい商品や建材、建築コンペなどに関して、バナー広告やタイアップ記事を作成するなどして、商品PR も手掛けています。
なので、ある一つの事業で収益化しているというよりも、アーキテクチャーフォトというメディアを中心として、そこに付随する様々なことで収益を上げているという感じですね。これは設計事務所にしても同じで、完全に個人のクライアントからの仕事だけでやっているわけではなく、例えば定期的に仕事がもらえる、企業からの仕事を同時並行でやっている方もいます。
同じ設計でもいろいろなチャンネルがあると思うので、そのように成立させている方々も多いと思います。
「評価」よりも「応援」を
ーーアーキテクチャーフォトの方針である「建築家のためにポジティブなサイクルをつくる」について、お話しいただけますか。
掲載する作品を判断している以上、評価の側面からは逃れられないのですが、建築家を「評価する」というよりは「応援する」メディアでありたいと思っています。現代ではもはや「批評する」という行為が成立していないという側面があるとも思うんです。
写真や資料を提供してくださった建築家の方に、ただアーキテクチャーフォトに載ったという事実だけではなくて、その先に「新しい仕事を生み出したい」という思いをもっています。それが僕らの時代の建築メディアがやらなければいけないことだと、徐々に自覚しだしました。
20 年前は、住宅だけをこれからずっと建てていけば、建築家は生きていけるだろうという雰囲気があったんです。当時の文献を読み返していてもそういう風潮があったのですが、いざ20 年経ってみると新築を建てるだけではなくて、リノベーションの仕事も増えているし、店舗の仕事も増えています。
そういう変化のなかで建築家の方が、ただ業界内の評価を得られるというだけではなく、実際の仕事に繋がるにはどうすればよいか、ということを常に考えてやっています。
ーー具体的にはどのような形で、設計者の方々に仕事を繋げていらっしゃるのでしょうか。
そうですね、アーキテクチャーフォトでは掲載する記事に設計者のサイトのリンクを直に貼ったり、Instagram等のSNS でも、設計者のアカウントを紐づけたりする等、建築業界の内外で繋がりを産むハブとして機能するように意図しています。
インターネットの仕組みとしてハイパーリンクというのはすごい発明だと思うんです。異なるサイトがリンクによって繋がり、読者はクリックによって新たな情報と出会うことができます。ネットがビジネスになると分かってから出来たサイトは、自身のサイト内で回遊してもらう事をよしとし、他サイトへの流出を嫌う傾向があるように見えます。
アーキテクチャーフォトはネット黎明期から続くメディアでもあるので、そのネットの良さを最大限生かしたいと思っています。ビジネスの為にネットを使っているのではなく、ネットに可能性を見出しそれが仕事にもなったメディアだからですね。そのスタンスの違いは大きいと思っています。
また反響という面で見ると、特にTwitter やInstagramでは、数十万を越えるアカウントが閲覧してくれる建築、数万を越えるアカウントがアクセスしてくれる住宅作品も多く、クライアントの依頼候補先に掲載くださった建築家がリストアップされているという手ごたえもあります。
設計者とクライアントの間に入って仲介料を得るマッチングサイトとか紹介ビジネスをやっている人や団体はたくさんあるんです。もちろん、そういうところから仕事を得るというのもよいと思います。ただ、本当は建築家が自分自身のサイトや発信を通して、直にクライアントから、仕事をもらうのが一番よいと思っています。それは僕が設計事務所時代に下請け仕事や紹介の仕事をたくさんして実感したことです。
なのでアーキテクチャーフォトは、そのような状況づくりに貢献したいという意識が強くありますね。
「追求深度」を測りたい
ーー建築家を評価するのではなく、応援していくスタンスということですが、そのようなメディアを実現していくにあたって、どのようにして掲載する作品などを決定されているのでしょうか。
建築を選んでいくなかでは、あらかじめ決めた視点があるわけではないです。前提として建築は作品ごとに目指してる方向性とか良さは千差万別だと考えていますね。作品ごとに他の作品と違うポイントのようなものがあると思うのですが、それをうまくこちら側で見出して、伝えるべきところを伝えるようにしているので、事前に「こういう視点があったら載せる」という型をもって作品に向き合ってるわけではないですね。
どんな作品にでもよいところは必ずあると思うので、その作品を紹介するとしたらどこをフィーチャーすれば一番よく伝わるか、という見方をしています。やっぱり、建築っていろいろな可能性があると思っているんです。
掲載させていただく作品については、その設計者が目指す方向性のなかでの「追求深度」のようなもので測りたいと思っています。つまり、「こういうビジュアルの建築が好きだからそれを載せる」というわけではなく、「その建築がいかに固有の目的を追及できているか」で作品を見ているように思います。
僕の知識が全ての分野で十分にあるわけではないことは承知していますが、どれだけ追及できているかについて、ある程度いろいろなことを見てきた経験のなかで判断しているつもりです。
ーー雑誌など、昔からある媒体との違いはどのような部分にあるのでしょうか。
第三者として見ていて、既存のメディアであれば、建築の歴史性であるとか空間の新規性といったことを価値の中心においている面があるのではないかと思っています。それと比較し、アーキテクチャーフォトでは、例えば、その社会のなかでのあり方やプロセスなどに独自性が見られる作品なども評価して紹介するようにしています。多面的な価値観を伝えることで、読者がそういうやり方もあるんだ、と気づいてくれるように意識しています。アーキテクチャーフォトは、そういう多様な視点が混在して載ってるメディアになっていると思います。
編集思想は意外に古いんです
ーー編集において、アーキテクチャーフォトの独自性が出ている部分はありますか。
例えば同じ建築でも、それぞれのメディアによって着目点は変わってくると思うんですよね。その外観が語るべきところなのか、内装なのか、はたまた背景にあるコンセプトなのか、設計するプロセスなのかみたいなところは変わってくると思っていて、最近はそれを表現しようと意識しています。
数年前までは、設計者の名前と作品名があって、写真が並んでいるくらいのドライな方が作品をフラットに見られていいと思っていました。最近はもう少し、アーキテクチャーフォトらしい編集要素を出した方がいいのかなと思っています。なので、タイトルの後にこういう作品ですというふうに、短いテキストで少し補足するような構成をとるようにしています。
加えて、写真を3枚選んで、建築家の方からいただいた文章のなかから読むべきところを抽出して、その写真と文章を組み合わせることで、建築の使われ方や、「アーキテクチャーフォトはこの作品をこう見ています」という個性を伝えていくことができると思っています。
ただ一方で、伝わるといってもそれは空気のようにさりげないものでよくて、「これはアーキテクチャーフォトっぽい」と感じられてしまうと、作品よりメディアが前に出てきてしまう状況になっていると思うんです。メディアというのは作品を伝えるための裏方的存在なので、いかに的確にその作品の良さを引き出せ、それが作品自体の良さとして伝わるかが重要なのではないかと考えています。
だからそういった意味では、古い編集思想をもっているウェブメディアであるという気がしています。ただバズればいいとか反響があればいいという事ではなくて、その人が考えたことをしっかりと伝えていきたいです。
若い学生が本を読まないとか、ウェブメディアすら見ていないとか、建築家のことを知らないという話は聞いていて、でもそれって悪口ではないと思うんですよ。もしかしたらそれは伝え方の問題かもしれないじゃないですか。だとしたらどういう伝え方があるのか、というのを考えたいですね。
例えば、Twitter の140 文字の中で建築の面白さを伝えるようにしていけば、そこから何人かは「建築って面白いな、もうちょっと深く知ってみよう」と思ってくれるのではないかと思います。そこからウェブサイトに移動して、図面を見るとか、コンセプトを見るという行動に繋がればいいかなという気がしています。
作者も気付かない魅力を発信する
ーー建築家が仕事を得ていくにあたって、アーキテクチャーフォトはどのような役割を担っているのでしょうか。
建築家の方の代理でプロモーションをしている、という側面もあると思います。全ての人が、自分でうまく作品の魅力にフォーカスして発信できるわけではないので、代わりに建築家自身も分かっていなかった良さに気付いて、それをうまく今のSNS 社会の法則に載せて発信します。
一般の人達にもたくさん見てもらえれば、その作品も認知されるだろうし、もしかしたら、建築家とか建築業界って社会をよくするために頑張っているんだとか、業界自体の宣伝にも繋がってくんじゃないかなと思っています。
また、Instagram やFacebook など複数の媒体を使用することで、マス層にアプローチしていくことができると思うのですが、やっぱりマス層と専門家に向ける説明の仕方って変わるとは思っていて。業界関係者同士で話していたら通じる言葉も、お客さんに対して同じ言葉を使ったらうまく伝わらないと思うので、伝え方を調整するというか、説明の仕方に意識的になると、より効果的なのではないかと思いますね。
ーー発信の際には、具体的にはどのような点を工夫されているのでしょうか。
例えば、媒体によって選ぶ写真や順番などに工夫をしています。SNS はフォーマットがあり、投稿する形を自由に決められないですよね。Twitter だったら写真を4枚掲載すると、タイル状に1、2、3、4という順で並ぶし、Instagram だと2枚目以降の写真が見えなくて、1枚目の写真をスワイプしないと次の写真が見られません。
その構造の違いはかなり大きくて、Instagram では、注目を集めるであろう写真を1枚目に置かないと、2枚目以降の写真が見てもらえないということなんです。
なので、例えば、夜景の写真なんかを意識的に1枚目にもってきたりもします。逆にTwitter だったら、4枚同時に表示されるので、1枚目が必ずしも見せ場となる写真ではなくても見てもらえます。なので、4枚の写真の組み合わせのなかで建築の動線を表現してみたりとか、少しずつ変えています。
些細なことかもしれませんが、不特定多数に発信していくとしたら、そこが意識できているかどうかが大きな違いになってくると思います。
「あえて設計事務所に頼む」選択肢を示す
ーー建築家が仕事を増やすためには、他にどのような取り組みが必要なのでしょうか。
お客さんが建築設計事務所を選ぶときのメリットを伝えていくことも、必要だと思います。全ての人が、建築家が考えていることとか社会的意義を理解して、依頼しているわけではないと思うんです。
建築雑誌や建築メディアを見ると、やっぱり建築家の方はとても深く考えて文章を書いているけれども、必ずしも依頼者がそれを100%理解して依頼しているわけでもないと思います。でも、建築家の意図とは異なっていても、そこに価値を見出しているから頼んでくれているわけであって、どこに価値を感じてくれているのか、どう伝えたらよいかを意識するのが大事だと思います。
例えば、Instagram に「# マイホーム」とタグを付けて建築作品を投稿すると、面白いことに、ハウスメーカーとかの住宅のなかに建築家の住宅の写真が出てくるわけです。そうすると見た人に、世の中にはハウスメーカーだけでなく設計事務所に頼むという選択肢がある、ということが伝わってくのかなと。そういう建築業界全体の宣伝も担えればと思っています。
実際、Instagram をうまく活用している、住宅を多く手掛けている建築家の方とやり取りすると、今はDM とかで仕事をもらう時代だと言ってるんですよね。だから住宅で仕事をしていくためには、Instagram を活用していくことが今の時代に合っているのだと思います。
多様な視点で評価する
ーーメディアには様々な種類がありますが、ウェブメディアであるアーキテクチャーフォトと他のメディアの違いについて教えてください。
ネットだからと図面を出すことがはばかられるという人は特に住宅などではいらっしゃいます。雑誌は物理的メディアで書店に行かないと見られないけれど、インターネットだと世界中に公開されてしまうと考えているのかもしれません。逆に、誌面という物理的な制約がないので一つのプロジェクトに対してたくさんの写真や資料を掲載できるというメリットもあります。
また、雑誌のような紙媒体のメディアに載っていない住宅や建築がアーキテクチャーフォトには載っていることも一つ大きな違いだと思います。それはもちろん編集の切り口の違いであったりもしますが、アーキテクチャーフォトには視点の多様性があると思っています。
そういった意味で、ポジティブに物事を捉えて深読みしていく見方をしてもらえると勉強になるかなと思います。意匠系の建築学生が、学校の課題で新規性のある空間をつくろうとしたときに参考になるような建物という側面だけでなく、社会と接続したり対話している建築という視点でも建築を掲載しているメディアなのかなと思います。
ーー他のウェブメディアと比較したときにアーキテクチャーフォトの特徴はどのような点だと思われますか。
大きな違いとして、編集している僕自身の経験があると思います。僕が他のメディアの編集者と違う点は、大学院である程度アカデミックな視点で建築を見て、次に大規模な設計事務所で実務に関わって、その後小規模な設計事務所で仕事をした経験があることです。その過程で、建築のアカデミックとビジネスの両方の面を知りました。
建築雑誌に載るような建築をつくろうと思うと、日本建築の歴史や空間の変遷などを見て、そのなかで一歩継ぎ足したような新しさを空間の中に埋め込む必要があると思います。
その一方で、小規模な事務所で住宅を設計してみると、デザインといってもその方向性によって、お施主さんが価値を感じるデザインと、価値を感じないデザインがあるということが対話のなかで分かってくるんです。住宅を数多く手がけているような建築家だと、そういったクライアント層が建築家に求めている空間を、実際の形にするうまさがあります。実務を経験したあとだと、そういうこともよく分かるんです。
それは、もしかすると建築の歴史のなかでの新規性を追求しているわけではないかもしれません。でも、お客さんに設計の価値を感じてもらって、お金を払ってその建物を建てたいと思ってもらえるとすれば素晴らしいことだと思います。僕は、そういう作品がアーキテクチャーフォトに掲載されていれば、こういうデザインをすることが、建築家として生きていく方法の一つになるんじゃないか、ということを読者に伝えられるのではとも思っているんです。
そういうところが、アカデミックな視点とビジネスの視点の両方を分かっているからこそのメディアであると思っていて、実務経験の無い編集者との違いだと思っています。
メディアが変える建築のかたち
ーーメディアによって建築が変わることはあると思いますか。
変わってしまう可能性はあります。例えば、SNS のアクセス解析とかを見てみると、住宅だとこういう形の方が反響がいいということが分かってしまいます。そうすると設計者のなかには自分のアカウントの解析結果を意識的にチェックして、次も、反響があった建物と同じような外観の建物をつくろうと思う人は出てくるのではないでしょうか。
それが成功するとは限らないけれど、設計者がアクセス解析を見て、またこういう建築をつくってみようって思ったとしたら既にメディアが影響を与えているということになるのではないでしょうか。
そういった意味では「メディア環境が実際の建築に影響を与える」可能性はSNS 時代にはより増えていると思います。
ーー例えば、反響がよい形というのは具体的にどのようなものですか。
アーキテクチャーフォトのInstagram アカウントに掲載させてもらっている住宅作品の解析結果を見ていると、「外観、切妻屋根、夜景」の3つの要素が揃った写真はすごく反響が大きいという感覚があります。
僕が一つの仮説として思ったのは、写真はいまやある程度のものはスマートフォンで誰でも撮れると思うんですが、夜景写真はプロの建築写真家でないとクオリティの高いものが撮れない。だから、夜景の建築写真はインスタのタイル状に写真が並んだ画面の上で目立つのではないかということです。やはり同じ性質をもつ写真が少ないと目立って、注目されやすくなる側面はあります。
あと、もしかするとクライアント層の中に、住宅は切妻屋根という憧憬のようなものがあるのではないかとも考えています。
SNS 映えする作品をつくることが本質だとは全く思いませんが、このインタビュー記事を読んだ人が、3つのポイントを揃えた建物つくろうって思うかもしれない。それって建築の限られた側面でしかないので、それを満たした上でお施主さんの要望を満たすものを設計することは可能だし、更にオリジナリティを加えることもできると思います。なので、パラメータとしてそのような観点が入ってくることがあるかもしれないですよね。
でもそれは今だけの現象なのかもしれないので、今後変わってくることもあるとは思います。
現代を生きる学生たちへ
ーー現在、建築情報に限らずあらゆる情報が私たちのまわりにあふれていますが、情報を受け取る際にどのような意識をもつべきなのでしょうか。
情報の偏りを無くしていく意識をもつといいのかなと思いますね。例えば、あるトピックに対して一つの意見だけをみるというよりも、その全く反対方向にある意見もみるようにすることが大事なのではないかと思っています。
片方だけの意見をずっとみていると、そこに正当性があるような感覚を覚えますが、全く逆の意見をみてみると、こういう意見もあるんだなという新鮮な感覚を得られると思うんです。自分がこういうふうに信じたいという想いは人間の誰しもがもっていると思うんですが、振れ幅のあるなかで真逆の価値観を知ってみると相対化できるようになる、つまり、自分の立ち位置を測れるようになると思います。
僕の経歴とも重なると思うんですが、大学院でアカデミックに建築を研究した後に、組織設計事務所でマンションは売るためにつくるものだという価値観の世界にいったことによって、建築を歴史的に意味のあるものだと捉える考え方と、完全に商品として捉える考え方という、ある種真逆な2つの価値観を知ることができました。
それと同じで、情報収集をするときも、一つの意見だけではなく、その反対側にあるものも知ることで、多面的に考えられるようになり、結果として自分の立ち位置が決めやすくなるのではないでしょうか。
ーー自己の判断基準が確立されていない学生の場合、どのように情報と向き合うべきなのでしょうか。
一つ僕が思いついたのは、メンターのような、この人の言っていることは信頼できるなという人を探すことですね。
建築家でもTwitter とかSNS をやっている人がいて、それぞれ個性があるんですよね。だから共感する建築家をフォローして、その人が読んだ本を読んでみるとか、そういうロールモデルのような人をネット上で見つけて、その人が興味をもっている情報を追跡していくとか、そういうところから始めていくといいかなと思います。
建築家でなくとも、自分がこの人は信頼できるなと思った人の発信を追いかけていくと、学びの出発点になると思うんです。それでだんだんこの人と考え方が違うなと思ったら、そこを掘り下げていけばいいし、その違う部分が自分の個性になっていくのではないかと思います。
これは情報に限らないですが、学生のうちは自分で判断が難しいのだとしたら、既に社会的に認められているものについて、何がいいといわれているんだろうと考えることも大切だと思います。いいっていわれているものも、全てが同じではなくて、違う良さなんですよね。
なので、やっぱりたくさん見て、経験することかなと思います。例えば、すごく斬新な空間で、写真一枚見ただけですごいなって思うものだったら、文章は読まなくてもいいのかもしれません。でも、アーキテクチャーフォトには、空間が劇的でない作品も結構載ってると思うんです。そこには、また別の良さやすごさがあるんです。なので何故それが載っているか、この作品はどんないいところがあるのかといった、ポジティブな深読みをしてもらって自分なりの答えを見つけて欲しい。だんだんとそういう経験が積み重なっていくと作品を相対化できていくんじゃないかなと思います。
僕は毎日建築家の作品写真を見ているし、たくさんの建築にも足を運んでいます。そういう経験があるからこそ、他の人が気付かないような作品の違いや特質みたいなものを解像度高くみられるようになっているのかなと思います。
ーー建築家を目指す学生がこれから生き抜いていくためにどのような工夫をするべきなのか、編集者の立場からのご意見を伺いたいです。
僕は、建築設計者としての生き方はいろいろあると思っています。例えば、空間の新規性を追究して雑誌の表紙を飾るような空間づくりを目指すというのも一つだと思いますし、より幅広くクライアントとなる人が住みたいと感じるような住宅に建築の価値を見出して、そういう建築をつくる設計者を目指してもいいと僕は思うんです。
もしかしたら、学生の立場からすると、クライアントがお金を払いたくなるような住宅が作品として見えてないということはあるかもしれません。それは実務経験を積まないとやっぱり理解できない部分でもあり、僕も自分で設計をしてみて、こういうデザインだとお施主さんが価値を感じてくれるんだということがようやく分かるようになったんです。
「建築業界の共有財産」として
ーーアーキテクチャーフォトは今後どのように展開していくのでしょうか。
規模を拡大していくというよりも、どうすれば、先に残していくことができるのかという意識があります。例えば、個人名を冠した設計事務所は、その方が亡くなったらたたんでしまう場合もあるし、組織として残っていく場合もあると思います。
僕はアーキテクチャーフォトという媒体をここまで育ててきて、作品を預かっているという認識がすごくあります。今のままだと、僕がいなくなったらサイトがクローズしてしまう可能性が高いので、先に残していけるような体制づくりをしないといけないなと、ここ最近思うようになりました。法人化したことや、編集パートナーの方々と特集記事の構築を進める仕組みを始めたのもそういう理由です。
この活動を僕だけでやっていけるわけではないので、考えていることを理解してくれる人に協力してもらって、僕自身の経験をフィードバックして得られた知見を仕組み化すれば、ある程度は継続性をもっていくのではと考えています。
そうやって引き継いでいくフェーズを視野に入れなければいけないのかなとは思います。「建築業界の共有財産」として残っていくことがアーキテクチャーフォトの目標なのかもしれないです。
ーー後藤さんご自身の目標についてもお聞かせください。
アーキテクチャーフォトでの建築作品の発信とは別に、建築のビジネスの側面について、何か建築家の方へのヒントになるようなものが本としてまとまったらいいなとも考えています。例えば、自分たちのデザインをどのように価値として伝えられるか、ビジネスとして成立させられるか、というようなものです。実際に僕もそうでしたが、経営的な側面も考えて仕事に取り組むことは、アカデミックに建築を学んできた人達には、恥ずかしいというメンタリティがどうしてもあるように思うんです。
でも、広く社会を見渡したり他分野の経営者と交流するなかで、お金を得ることはその分の価値提供をしているからだと分かりましたし、そうやって考えていくことにより、建築家が仕事を積み重ねることができれば、作品としてみてもクオリティが上がっていくと思っています。そういうビジネスの側面でも自分に伝えられることがあるのでは、と考えています。
ただ、アーキテクチャーフォトは建築家が作品を発表する、ネット上のハレの場みたいな存在でありたいと僕は思っているので、そこに同時に経営やビジネスの話が入ってくると、サイト自体のコンセプトが分かりにくくなるのではないかなと思っていて、別のチャンネルが必要なのだと思います。
アーキテクチャーフォトでは純粋に作品としての側面を取り上げていきながら、それを補完する別の形で発信もしていけたらいいのかなという感じです。note やFacebookでは既にそういう発信を始めているのですが、建築を生業として生き残っていくための考え方とかスキルについて、ヒントが得られる発信を拡大していきたいという意欲がありますね。
後藤連平(建築系ウェブメディア「architecturephoto®」代表)
1979年静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。建築と社会の関係を視覚化するメディア「アーキテクチャーフォト®」編集長。アーキテクチャーフォト株式会社代表取締役。組織系設計事務所勤務の後、小規模設計事務所に勤務。2003年からウェブでの情報発信を行い2007年にアーキテクチャーフォト®の形式に改編。現在はウェブメディアの運営等に専念し、建築系求人情報 サイト「アーキテクチャーフォトジョブボード」、古書・雑貨のオンラインストア「アーキテクチャーフォトブックス」の運営等も手掛ける。 著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)等、編著に『“山”と“谷”を楽しむ建築家の人生』(ユウブックス)等がある。