【小林・落合研究室】地域に根ざす設計技術・地域に根ざす人間居住
教授 小林広英
准教授 落合知帆
特定助教 宮地茉莉
人間環境設計論分野は、2002年新たに設立された大学院地球環境学堂に所属する。建築学科・建築学専攻には連携講座として関わり、そのため研究室には建築系学生とともに地球環境学舎(環境マネジメント専攻、地球環境学専攻)で学ぶ国内外の学生が在籍し、持続的な人間環境構築について、以下のような理念のもと研究を進めている。
「変容著しい現代社会において、地域の文化や風土から持続的人間環境のあり方を追求する。美しい自然から災害を起こす自然まで、多様な姿で示される地球環境の実相と、それらに対応してきた持続的な人間環境の構造を、実際の都市や集落から学ぶ。得られた知見や知識を施策、計画、デザインとして具現化し実践的な社会適応を試みる。「ひと・くらし・すまい・ちいき」という人間環境のあらゆるスケールに存する社会的課題を研究対象とする。」
この理念から、デザイン実践としての「地域に根ざす設計技術」、フィールド研究としての「地域に根ざす人間居住」が構成される。
【地域に根ざす設計技術】
現代社会の文脈における住まいや暮らしの再構築・発展的継承のために、環境デザインやソーシャルデザインの思考と方法を提示し実践的試行をおこなう。
【地域に根ざす人間居住】
自然環境と共生する集落や、多様な文化を内包する歴史都市のフィールド調査から、調和ある人間環境構築の知恵と実践のしくみを解明し、その持続可能性を探求する。
「地域に根ざす」という視点から、おのずと建築だけでなくその周辺領域にも感度を高め、デザインやマネジメントの枠組みを拡張する。また、多様な地域環境に対して学際的な連携、国際的な共同、そして地域住民との協働に取り組む。現在、前者には「風土建築の発展的継承」、「環境デザインの開発と実践」、後者には「地域資源とコミュニティ」、「自然災害と人間居住」のテーマ軸を立ち上げている。これらの研究から実践まで展開する様々な活動は、同一線上にあり相互に繋がっているといえる。例えば、「地域に根ざす設計技術」は、グローバル化が進む現代社会において、もう一度ローカリティの優位な要素を再評価する建築的試行であるが、「風土建築の発展的継承を目的とした再建プロジェクト(再生)」と、「未利用資源を活用した新たな環境デザインの提案と社会実装(創生)」は、地域資源と関わる建築のあり方を探求していく点で、等価な創造的活動と捉えている。このような関係性について、次ページ以降に各研究テーマの具体的な取り組みを紹介しながら、多様な研究・実践活動のシークエンスをみていく。
近年の研究・実践プロジェクト
風土建築の発展的継承
風土建築の再建プロジェクト(ベトナム、タイ、フィジー、バヌアツ、2007年−)
アジア太平洋木造建築文化と在来建築技術(2008年−)
現代社会における風土建築の多面的評価(ベトナム、フィジー、タイ、2016−2019年)
環境デザインの開発と実践
バンブーグリーンハウス・プロジェクト(日本各地、2008年−)
里山と連環する建築プロジェクト“たねや農藝“(滋賀県近江八幡市、2013−2016年)
景観舗装デザインプロジェクト(大阪府八尾市、2014−2015年、2018−2020年)
地域資源とコミュニティ
無住集落再生・新里人構想プロジェクト(福井県名田庄、2016年−)
砺波散村伝統住居の新築プロセス(富山県砺波市、2016年−)
ソーシャルハウジング改善プロジェクト(ミャンマー、2019年−)
サテライト古座プロジェクト(和歌山県串本町、2020年−)
自然災害と人間居住
大規模災害と参加型の住宅再建調査(インドネシア、2016 −2018年)
洪水災害常襲集落のフィールド調査(和歌山県本宮町等、2016年−)
伝統的な石文化とEco-DRR(滋賀県比良地域、2018年−)